九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 321
会議情報

作業療法と栄養管理
*東島 美佳渡辺 千賀子
著者情報
キーワード: 食生活, 調理, 栄養管理
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
食生活は人間が生きていく上で必要不可欠な行為である。また生きる楽しみの一つとして提示されている。今回、体重増加により膝への負担が生じている一症例に対し、食生活の改善を指摘された。調理活動を通して作業療法と栄養指導との相違から若干の考察を得たのでここに報告する。
【症例・経過】
68歳 女性 一人暮らし 診断名:左脛骨高原骨折・左第4中手骨骨折 既往歴:右膝関節症・DM・HT 身長:154_cm_ 体重:76kg BMI:32 食事箋:エネルギーコントロール食(1400kcal・塩分6g) 平成21年6月、車との接触事故にて受傷。膝関節への負担軽減のために体重コントロールが必要となり食事制限が指摘される。荷重が許可されたころより作業療法では家事動作への介入を行なう。家事動作での左手指への負担や下肢の耐久性確認目的にて調理訓練実施。初回、リハビリ室の調理室にて、日頃本人が食しているものから献立を立ててもらい荷物を持っての歩行訓練も兼ねて食材調達から実施。調理動作では手指の骨折への負担は少なく、また一定期間の立位姿勢にて疲労が生じないように椅子を準備することを提案した。味付けは調味料を目分量で行い、塩分の濃い味となった。2度目は栄養相談室内での調理室にて実施。食材のカロリー・塩分などが一目で分かるような提示をし、計量しながら調理を進めていった。本人の食生活に対する意識の変化がみられた。退院時体重は71kg。
【考察】
食生活は1]食材を調達する2]栄養を考える3]食事を作る4]食事を食べるに分けられている。作業療法では食生活の自立を支援する為に活動分析を行い、動作や姿勢、手段などを評価し生活環境を考慮して調理活動を行なっている。生活環境や家族関係などの影響により体重増加していた背景があり、本症例は管理栄養士による栄養指導で薄味や食事量の制限を指摘された。調理動作自体に問題は生じなかったが、味付けや量など栄養管理面での基礎知識・注意点などの把握が不十分あったことが考えられる。このことから管理栄養士・作業療法士で実際に調理活動を行なう上で事前に、1)管理栄養士による献立の立案や2)調味料の摂取量の確認できるよう計量を行う必要があると考えた。また3)リハビリ用の調理室・栄養相談用の調理室を必要に応じて使用する。4)退院後も活用できるような調理メニューの配布などを考慮した結果、本人も実践にて食事量や薄味を把握できたのではないかと考えられる。また、食生活において制限をされるだけではなく、好きなものをおいしく楽しみをもって調理を行なうことを実感でき、体重減少へと意識を向けることが出来たのではないかと考える。今後も互いの専門性を生かし適切な栄養管理をもとにリハを加味したアプローチが必要であると考える。

著者関連情報
© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top