九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 327
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地理情報システム(GIS)を用いた高齢者・障害者における空間地理情報分析
*溝田 康司
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キーワード: GIS, 高齢者, 地理空間分析
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抄録

【目的】
地理情報システム(Geographic Information System:以下GIS)は、多様で多量の情報を地理的位置に基づいて統合管理し、空間的解析を容易にする情報ツールであり、疾病・健康状況の地理的分布を解析する空間疫学にも応用が図られている。今回、地理情報分析システムMANDARA及びGISソフトSuperMap2008を用いて沖縄県北谷町をモデルに、高齢者、障害者に着目した地理情報分析を行ったので報告する。
【対象】
分析対象は、沖縄県中西部に位置する北谷町とした。人口約27000人の町で近年西部地域への居住人口の増加が見られる。2003年に「北谷町まちづくり住民意識調査」が実施され、自治会別の統計データが整備されており、分析対象に適した地域であると考えられた。
【方法】
地図データには国土地理院発行の数値地図を中心に北谷町が整備したラスタ地図をベクタ化し使用した。統計データは北谷町発行の統計書、第2次障がい者計画(いずれも平成19年)及び『北谷町まちづくり住民意識調査』調査報告書(平成15年)を使用した。自治会ポリゴンデータ、道路ラインデータ、標高メッシュポイントデータは、GISソフトSuperMapを使用し、ポリゴンデータをクリッピングし、shapeファイルを作成した。最後に、地理情報分析システムMANDARAを使用し、目的に応じた分析項目に基づいて地図化を図った。なお、分析項目は、自治会別の1.居住環境、2.高齢者・障害者状況と空間地形、3.道路環境である。
【説明と同意】
本研究に用いたすべての統計資料及び地図情報は一般に公開されているデータであり、説明と同意は必要ないと考える。
【結果と考察】
桃原区、上勢区に向かって漸次標高が高く、起伏量は北玉区が最も大きい。標高の高い地区は起伏量が小さく、段丘特有の平坦な居住環境が考えられる。高齢者、障害者状況と空間地形では、高齢率の高い地区と障害者比率の高い地区が比較的一致しており(r=0.82 P=0.008)、障害者の多くが高齢に起因した障害によるものと考えられる。高齢率が高く、障害者人口の多い北玉区、謝苅区については、起伏量が大きく、高齢者、障害者の日常生活活動の障壁となる可能性が示された。道路環境では、美浜区、宇地原区を除くすべての地区で幅員3m~5.5m未満の幅員道路が最も多い。道路密度は栄口区を中心に高く道路自体の整備が進んでいる地域といえるが、幅員5.5m未満の道路で整備されている状況にある。高齢化率、障害者人口の高い北玉区や宇地原区の一部は3m未満の幅員道路も散在し、生活活動空間の狭小化が懸念される。このようにGISは、統計情報を地理空間に反映させた分析が可能であり、地域リハビリテーション及び災害弱者対策に有効なツールであると考えられた。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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