九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 340
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高次脳機能障害者に対する6年間の取り組み
*松野 浩二遠藤 千冬
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抄録
【はじめに】
脳卒中に合併する高次脳機能障害(失語、失行、失認)のリハビリテーションは、障害像を理解した対応を長期間必要とする。しかし、入院期間の短縮やその後の介護保険制度の制約により、十分な対応がなされにくい状況下にある。福岡市立心身障がい福祉センター(以下、当センターとする)では、高次脳機能障害者に対して平成15年より高次脳機能障害リハビリ教室(以下、リハビリ教室とする)として地域活動の場を提供し、地域生活への移行に取り組んできた。その経過と課題について報告する。
【対象者】
 平成15年から平成20年までの参加者数は男性157名、女性126名計283名であった。年齢は29歳から85歳で平均61歳であった。疾患別では、脳卒中後遺症者86.4%、その他の疾患が13.6%であり、その他の疾患は脳外傷、脳腫瘍、筋ジストロフィーなどであった。
【リハビリ教室の内容】
 福岡市立障がい者スポーツセンター(以下、スポーツセンター)を利用して、リハビリ教室は週1回、午前10時から午後3時までの時間で、午前中の前半では全員でのストレッチを中心に準備運動を行い、後半は卓球、風船バレー、ボッチャを行った。夏季は希望者に対して水泳も取り入れた。休憩1時間を挟み午後は言語聴覚士を中心に失語症者のグループ活動、作業療法士を中心とした作業療法、マクラメグループ、スポーツの中から、各自希望する内容の活動に参加することとした。
【経過】
 原則2年間を1クールとして、参加者にはリハビリ教室だけの活動ではなく、市内で開催される障害者の競技大会や記録会などへも積極的に参加を促した。その結果として治療目的のリハビリテーションから地域生活へ、治療スポーツから生涯スポーツや競技スポーツへと目を向けるきっかけとなり、その後の個人やサークルでの大会などへの参加につながってきた。
リハビリ教室終了後は、スタッフとの協同で立ち上げたサークル活動、個人でのスポーツセンターの利用や他の教室への参加を促した。また、現在ではリハビリ教室以外に同じ経営母体の法人が運営する福岡市内4施設で同様の教室を開催し、市内全域から参加しやすい環境となっている。
【まとめ】
 比較的年齢の若い脳卒中者は介護保険施設の利用になじめない人も多く、地域社会での自立した生活に結びつくまでのリハビリテーションを受けづらい状況にある。リハビリ教室への参加を通じて、体力の強化やスポーツの習得はもちろんであるが、同じ疾患を抱えた人が集まって行うことによる本人や家族の障害受容や仲間作り、サークルの立ち上げや大会への参加など自発的な活動へのきっかけ作りとして成果が見られている。今後の課題としては、高次脳機能障害者のグループ対応において、障害程度による個別の支援が必要な場合が多いため高次脳機能障害に理解のあるボランティア等の養成が必要と考える。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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