九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 35
会議情報

重量が異なる対象物への到達把持運動
三次元動作解析による質的評価に向けて
*大田 瑞穂鈴山 久美子田邉 紗織坂口 重樹
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【目的】
我々が日常的に何気なく行っている到達把持運動は古くからそのメカニズム解明のために多くの研究が行われてきた。近年では把持対象物の大きさ・形状などを変化させることで把持運動と到達運動が時空間的な協調関係にあることが証明されている。今回、3次元動作解析装置を用い、把持対象物の重さの異なることによって到達把持運動の姿勢制御が異なることを検証するために研究を行った。
【方法】
対象は手に運動機能障害をもたない健常成人8名(平均年齢26.1±3.0歳)とした。利き手は全員右側であり、手掌面の大きさ9.3±0.5cm、上肢長48.9±1.7cmであった。研究計画において当院の倫理審査委員会の承認を得た後、対象者に研究の趣旨を説明した上で同意を得られた対象者のみ計測をおこなった。使用機器は三次元動作解析装置(VICON MX)、椅子、机を使用した。椅子・机間距離は10cmとし、対象物までの距離は机の被験者側から40cm前方、開始姿勢は端座位(膝関節90°屈曲位)とし、手関節は対象物の位置から後方40cm、横に25cmの位置とした。計測課題は利き手で対象物を把持し、10cm上方へ持ち上げる動作とした。速度ならびに把持方法に関しては被験者の任意として、重さの異なる対象物A(35g)、B(1035g)を無作為に把持挙上させた。対象物A・Bは大きさ・形状ともに同一のものとした(500mlペットボトル)。計測に先だって対象物の重さを認識させるために5回練習を行った。抽出データは母指・示指間の3次元的な距離の最大値(以下、最大手指口径)、さらに、最大手指口径時までの身体重心前方移動距離、股関節屈曲角度を算出した。データ分析には対象物A・Bの条件下で算出した数値を対応のあるT-testにて検定した。
【結果】
動作開始から対象物を把持するまでの最大手指口径は対象物AとBで有意な差を認め(p<0.05)、対象物Bで大きくなった。最大手指口径時までの身体重心前方移動距離においても対象物AとBで有意な差を認め(p<0.05)、対象物Bで前方移動距離が大きくなり、股関節屈曲角度においても同様に対象物Aよりも対象物Bで有意に屈曲角度が増加した(P<0.05)。
【考察】
ヒトが重量の重い物体を把持して持ち上げる際には末梢の筋群だけではなく、上肢・体幹の筋活動・運動野の広範囲な活動が認められるという報告がある。本研究においても手指口径の大きさだけでなく股関節屈曲による体幹前傾角度が大きくなること、それに伴い身体重心が前方に運ばれることが示唆された。さらにそれらが把持する以前の到達運動時に準備されている点で、到達・把持・操作の上肢・手指運動が密接に関連しており、時空間的な協調関係にあることを認めている。今後も到達把持運動が様々な条件下で変容していくことを理解していき、それらの知見を基に到達把持運動の質的評価の検討、または上肢・手指機能障害に対する治療方法の一助を検討していきたい。

著者関連情報
© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top