九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 36
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強度の異なる静的ハンドグリップ運動による循環応答
*倉野 久美井福 裕俊
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抄録

【はじめに】
 運動による循環応答は、その運動様式・強度・時間等により影響を受ける。筋活動による代謝産物蓄積により筋内での化学受容器が刺激され起こる筋代謝受容器反射調節について、近年下肢の大筋群を使った静・動的運動によるものが報告されている。本研究ではハンドグリップ(HG)運動という上肢の小筋群運動で、循環応答はいかに変化するか、その変化は運動強度・運動量どちらに依存するかを知るため、以下の研究を行った。
【方法】
 被験者は22歳の健常男性5名。すべての被験者に対し、事前に実験の内容について説明し同意を得た。
 実験は、以下の2つの方法で行った。1)事前に最大随意握力を電子血圧計(ED-100、YAMAGAMI社)にて計測した。運動量を統一するため先行研究より、その最大握力の30%で2分間、45%で1分30秒間、60%で1分間の静的HG運動を行った。手順は、仰臥位にて安静10分、HG運動1~2分、回復10分とした(CER)。2)日を改めて、1)の運動負荷を行い、運動直後に運動側上腕部に収縮期血圧より20mmHg以上の圧力をかけて2分間阻血した。その後回復を10分とった(PEMI)。運動中、Physio Flow(MANATEC社製)と自動血圧計にて、心拍数(HR)、1回拍出量(SV)、心拍出量(CO)、 最高血圧(SBP)、最低血圧(DBP)を測定した。HRは胸部双極誘導による心電図のR-R間隔より算出し、平均血圧(MBP)は(SBP-DBP)/3+SBPから、 末梢血管抵抗(TPR)はMBP/COから求めた。統計処理には、すべての項目に対しコントロール値との変化量の比較にDunnett’s testを用いた。また、各条件下の比較を行うため、ANOVA4を用い、多重分析としてBonferroni post hoc testを行った。有意水準は5%とし、それ未満を有意とした。
【結果】
 運動強度と運動量との関係では、HG運動終了時は各強度ともHR増加・SV減少・CO増加し、運動強度による影響は受けなかった。運動後の筋代謝受容器反射では、MBPとTPRにおいてCER群と比較して有意にPEMI群が増加を示し、その他の項目では有意な差はなかった。
【考察】
 小笠原(2009)らは運動強度の異なる各1分間の下肢の静的運動を行い、運動強度が高いほどSVは減少し、その影響はMBPとHRの増加が関係していると述べている。静的運動では、静脈環流量に影響を大きく与える下肢の運動と同様に、HG運動という上肢の小筋群の運動においてもSVはMBPやHR増加の影響を受け減少することがわかった。また、運動強度より運動量の影響を受けることがわかった。
 筋代謝受容器反射は、先行研究の通り、心臓交感神経へは関与せず末梢血管抵抗に関与することが分かった。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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