九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 37
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下肢末梢動脈疾患における経皮的末梢動脈形成術翌日の運動療法の安全性に関する検討
*嶋田 誠治石丸 智之木村 多寿子雨宮 妃曽我 芳光横井 宏佳
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抄録

【はじめに】
末梢動脈疾患(以下,PAD)は間歇性跛行を主とした虚血症状を呈する疾患である。その治療内容は多岐にわたるが、血管内治療である経皮的末梢動脈形成術(以下,PPI)の適応が近年拡大してきている。PAD患者の治療目標は下肢を健全に保ち、長期生命予後とQOLを改善することであり、運動療法も効果的な治療として重要視されている。しかし、PPI後の運動療法に関する報告はほとんど認められず、PPIを受けた患者は適切な運動指導を受けることなく、運動の恩恵から見離されている傾向がある。そこで今回、我々はPPI翌日の運動療法の安全性に関して検討したので報告する。
【対象】
2009年8月から2010年1月までの期間中に当院にて経皮的末梢動脈形成術を行なったPAD患者126症例のうち翌日に運動療法が可能であった41症例59病変を対象とした。
【方法】
当院規定のPPIクリニカルパスに基づき全例で少なくともPPI前日より抗血小板薬を投与し、以降1ヶ月以上継続させた。PPI翌日に屋内平地歩行において自覚的運動強度13を目標に行なうこととし、運動負荷中ならびに退院30日以内の心血管事故発生について調査した。クリニカルパスは入院から退院まで4日間で構成されており、PPI翌々日が退院日である。なお、本研究は所属長の承認のもと、対象者の個人情報に十分配慮し実施した。
【結果】
対象患者の背景は、平均年齢72歳、男性71%、高血圧症66%、脂質異常症61%、糖尿病59%、慢性腎臓病44%、肥満24%、虚血性心疾患61%、脳血管疾患39%であった。PPI翌日の屋内平地歩行での平均跛行出現距離は265mで、PPI前の自己申告での平均跛行出現距離98mよりも改善していた。運動中に重篤な合併症(急性下肢虚血、穿刺部血腫増大、意識消失、胸部痛など)が生じた症例はいなかった。また、PPI後30日以内に亜急性血栓閉塞、再血行再建、切断、脳血管疾患、虚血性心疾患、死亡となった症例も認められなかった。
【考察】
PPI後に生じる最も重大な合併症は急性下肢虚血と亜急性血栓閉塞である。特に退院後に生じる亜急性血栓閉塞は緊急バイパス手術や切断となり得る合併症である。今回の検討では、対象は少数例ではあるもののPPI翌日からの自覚的運動強度13程度での運動療法は抗血小板療法の効果を損なうものではないと考えられた。PAD患者の長期生命予後は健常人と比較して不良であることが知られており、間歇性跛行患者の5年死亡率は30%で死因の70%が脳梗塞や心筋梗塞といった心血管イベントである。患者自身もPADは「全身的な動脈硬化の一疾患」であることを認識する必要がある。そのため、治療後早期に退院する患者であっても、可能な限り運動療法から得られる情報で運動指導を行なうことが重要であり、それにより長期生命予後改善に貢献できるのではないかと考える。
【結語】
PPI翌日であっても自覚的運動強度13程度での運動療法は安全に行なうことができると考えられる。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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