抄録
【目的】
2007年末に、わが国で慢性透析療法を実施している患者数は275、119人であり、沖縄県でも3、886人が透析療法を受けている.一般的に透析患者の運動耐用能(体力)は、おおよそ50%程度低下すると言われているが、透析患者において客観的に示した報告は少ない.生体電気インピーダンス法(以下、BIA法:Bio-electrical impedance Analysis)により、非侵襲的かつ簡便に身体の体脂肪や骨格筋量などを高精度に測定できるようになった.そこで、HD患者に対しHD後にBIA法による体成分分析装置を用いて各種体液量を測定し、そこから得た数値と日常生活動作(以下、ADL)評価法との関連性を分析し、体成分分析装置のHD患者に対するリハビリテーション臨床における有用性について検討をした.
【対象】
当院にてHD治療を受けているHD患者230名中リハビリテーションを受けている患者49名(男性:18名、女性31名)、平均年齢66.8±12.1歳.平均透析歴14.4±10.0年.原疾患は慢性糸球体腎炎26名、糖尿病性糸球体腎硬化症14名、腎硬化症3名、その他の疾患6名である.
【方法】
ADL評価法としてFIMを使用し、BIA法による身体組成の測定には体成分分析装置(Bio Space社製InBody S20)を使用した.血液検査データも参考とした. 各データを比較検討し、統計処理としてt-検定を用いた.危険率は5%未満で有意差ありとした.
【結果】
身体組成の測定結果は骨格筋量(外来:18.7±3.6kg、入院:18.1±5.5kg)、血液検査結果より血清クレアチニン(外来11.1±2.4 g/dl、入院:9.2±2.2 g/dl)であった.FIM(外来:123±8.2、入院:69.1±32.5)、と入院患者が有意に低かった(P<0.05).外来と入院患者の骨格筋量は有意な相関を示さなかったが(r=0.66)、血清クレアチニンでは有意な相関を示した(P<0.01).
【説明と同意】
ヘルシンキ宣言に沿い対象には、目的・方法を十分に説明し、研究発表をする旨の同意を得た.
【考察】
入院、外来とも透析患者の骨格筋量は標準より低下していた.入院患者と外来患者の間には骨格筋量には有意な差がなかった.クレアチニンとFIMは入院患者が有意に低下していた.この結果により、ADLに有意な差があっても、骨格筋量に差がないという興味深い結果が得られた.また、血清クレアチニンに有意な差が得られたことより、骨格筋の質に差があるのではないかと予測される.今後、更に多くのデータ収集を行い、第2報へ繋げたいと考える.一見元気に見える外来透析患者は長年の透析治療を受けているため、FIMの得点は高いが骨格筋量は低下しており、透析患者はADLの維持のために日頃の運動療法が必要であるのではないかと考える.