九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 43
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若年健常者の呼吸困難感・下肢疲労感に音楽が与える影響
‐Endurance Shuttle Walking Testによる検討‐
*新貝 和也千住 秀明
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キーワード: 音楽, 呼吸困難感, 歩行
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抄録

【背景】
運動のアドヒアランスを高めるために音楽の有用性が示唆されているが,音楽が運動時の身体に与える影響は明らかではない.そこで本研究では,音楽が運動時の身体に与える影響を自覚的運動強度(下肢疲労感・呼吸困難感),呼気ガス分析によるデータから検討したので報告する.
【方法】
本研究を十分に理解し,同意が得られた健常若年男性13名(年齢20.7±1歳)を対象とした.対象者は事前評価として,自転車エルゴメーターによる運動負荷試験を実施し,その結果から得られた最高酸素摂取量の40%に相当するレベルのEndurance Shuttle Walking Testを音楽有・無の条件(以下音楽ESWT,コントロールESWT)で2回実施した.研究デザインは無作為クロスオーバー試験を採用し,実験は2分間の安静座位, 20分間のESWT,10分間の回復段階(安静座位)とした.また,2回のESWT時には携帯型呼気ガス分析装置を装着して測定した.評価項目は,自覚的運動強度(修正Borg Scale),楽しさ(Visual Analog Scale),心拍数,呼気ガス分析より得られるパラメーターとした.自覚的運動強度は,ESWT実施時に3分毎,回復段階では1分毎にそれぞれ評価した.音楽ESWTでは,被験者が好みの音楽をESWT実施中・回復時にCDプレーヤーにて流した.なお,本研究は当大学の倫理委員会の承認を得た.
【解析】
音楽ESWT,コントロールESWT間における各パラメーターの比較には,対応のあるt検定,Wilcoxonの符号付順位和検定を用いた.呼吸困難感・下肢疲労感の音楽有・無の条件と運動時間の関連性を,対応のある因子と対応のある因子の二元配置の分散分析にて分析した.いずれも危険率5%未満を有意とした.
【結果】
呼吸困難感・下肢疲労感は音楽ESWT・コントロールESWT共に,運動開始直後から直線的に上昇し,運動終了後緩やかに下降していった.また,呼吸困難感・下肢疲労感共に,運動開始数分後から運動終了数分後にかけて,コントロールESWTよりも音楽ESWTの方が有意に低値を示した.さらに,音楽の有無と運動時間に有意な交互作用がみられ,運動時間が経過するにつれ,音楽による呼吸困難感・下肢疲労感の軽減効果が増大していた.呼気ガスデータでは,運動開始後,定常状態になってからのVO2/Wが音楽ESWTで有意に高値を示したが,その他のパラメーターには有意な差はみられなかった.また,楽しさは音楽ESWTで有意に高値を示した.
【まとめ】
音楽で運動時・運動終了後の呼吸困難感・下肢疲労感が減少し,楽しさが増大した.また呼吸困難感・下肢疲労感の軽減は運動時間の経過につれて増大した.これらのことから運動中の音楽は,楽しく少ない疲労感で長時間の運動が可能となることが示唆された.

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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