九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 53
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装具装着を容易にするイージーリング
*野間 俊司伊東山 洋一伊東山 徹代中村 智哉市坪 明子河上 紗智子池田 美穂千代田 愛美松崎 智範永田 英二工藤 理沙
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抄録

【目的】
片麻痺の症例が装具を装着する際、ベルトを片手で角環に通す動作は案外難しい。また、利き手が麻痺した例なら更に装着は困難となる。そこで角環に隙間を開けベルトを通し易く抜けにくい、相反する機能を持ったリングを発案した(以下イージーリングと称する)。そこで従来の角環と新たに作成したイージーリングでの装着時間を各々測定し、若干の考察を加え報告する。
【方法】
検証を理解し角環とイージーリングと装着について比較検討する事が目的である事を事前に説明し、同意を得た50例(右25・左25例)に行った。下肢BRSは1:0例、2:15例、3:19例、4:14例、5:2例、6:0例で、有効性の判断にはWilcoxonの符号付順位和検定を用いた。
【結果】
1) 角環での装着時間は、左片麻痺では13.3~166.1秒(45.0±46.3秒)右片麻痺は19.8~300.0秒(66.0±60.5秒)で 、イージーリングでの装着時間は、左片麻痺では7.8~140.1秒(平均32.2±37.6秒)右片麻痺は9.2~149.2秒(39.3±32.2秒) で、イージーリングの方が、左片麻痺でー4.1~―36.2秒(-13.8±9.0秒)、右片麻痺ではー5.6~―150.8秒(-26.7±30.3秒)と装着時間が短縮され、右片麻痺の症例で効果が著明であった。
2)全例でイージーリングの有効性(P<0.01)が認められた。
3)測定終了後、イージーリングから角環に戻す事を説明していたが、角環に戻す事を希望する例は1例もいなかった。
【考察】
今回、角環に隙間の開いたイージーリングを創作し、装着時間を計測したところ、全例でイージーリングの方が、装着時間が短縮され、装着し易いという結果を得た。装着が容易になった理由は、差込みから折返しまでベルトを持ちかえる必要が無くなった事が大きい。また、これらの症例の中には装具を作成して以来、初めて自力でベルト装着できた例もおり注目に値する。装具装着を容易にする事で安定歩行を獲得させる事は、転倒のリスクを減少させ歩行能力の維持・拡大のみならず健康維持にもつながる。その事は、在宅療養を継続するのに重要な因子であり、今回完成したイージーリングは在宅療養の継続に貢献できよう。また、今後は、症例の立場に立って装着し易さといった面も視野に入れて、装具の処方がなされる機会が増える事を切望すると共にイージーリングが装具を処方する際の選択肢の一つになれればと思う。
【まとめ】
1)脳卒中片麻痺に角環と新たに開発したイージーリングを用い装着時間を検討した。
2)全例でイージーリングの方が装着時間を短縮できたが、特に利き手麻痺の例で効果が著明であった。
3)症例の歩行能力をみる際、装具装着時間を考慮する事は有用であると考える。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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