九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 54
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維持期脳卒中片麻痺患者における歩行機能維持訓練法の一考案
疑似脳卒中患者歩行分析結果より
*田島 徹朗浪本 正晴村山 伸樹
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キーワード: 維持期, 歩行解析, 片麻痺
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抄録
【目的】
在宅で過ごす脳卒中患者にとって,歩行機能の維持は必要不可欠な課題となっている.年々,歳を重ねるにしたがい麻痺側機能の低下もさることながら,非麻痺側機能の変化が移動能力低下の鍵となっている.そこで今回,在宅にて脳卒中患者自らが,簡便で歩行機能の維持に有効な訓練方法がないか疑似脳卒中患者を用いて検討し,若干の方向性が認められたので報告する.
【方法】
被験者には,歩行に支障をきたす既往ならびに障害を有しない健常人35名(平均21±0.2歳)を対象とした.まず,Aパターンとして,装具を付けない状態での通常歩行をさせ,次にBパターンとして,支柱付き短下肢装具(90°足関節固定)を装着させAパターン同様の条件で歩行測定を行った.さらに,Cパターンとして,Bパターンに加え,非装具装着側の股関節周囲筋に対し,ストレッチを施した後に同様の歩行測定を行った.Cパターンにおける簡便な訓練方法(ストレッチ)としては,ハムストリングス,および股関節内転筋群に対し,徒手にて30秒間持続的伸張を各3回施行した.ストレッチの強度は,あくまでも本人の可動限界点を基準として過剰なストレッチはさけた.歩行測定には,被験者に7mの直線距離を歩いてもらい,途中に埋め込んだ床反力計プレート通過時の連続4歩をもとに光学三次元動作解析システムVicon MX+MX-F20を用いて歩行率,重複歩行距離,重複歩行時間,歩行速度を中心に解析した.検定は,Stat View5.0を用い装具装着側を基準にPaired-t検定を行い,有意水準をP < 0.05とした.
【結果】
1)各B,Cパターンごとの歩行率,重複歩行距離,重複歩行時間,歩行速度に左右差は認められなかった.2)次にAパターンのパラメータを基準に各A,B,C間における(i)装具装着側と(ii)非装着側各々における検定を行った.(i),(ii)ともに正常歩行であるAパターンにおいてもっとも良い歩行効率を示すことは言うまでもないが,次に効率の良い数値を示したのは,両側ともにストレッチを加えたCパターンで,A,B値のほぼ中央に位置していた.つまり,介入効果の有効性が各歩行率,重複歩行距離,重複歩行時間,歩行速度において認められた.(P<0.05)
【考察】
疑似脳卒中患者の歩行において,非装具装着側における簡便な股関節筋群のストレッチにより,その歩行機能に良好な影響を与えることが確認できた.つまり,単純片麻痺患者が残された上肢を用いて,自ら非麻痺側下肢を入念にストレッチする方法は,その機能を最大限に発揮させ,歩行機能の維持に少なからず良好な対策になりうると推察される.また,装具装着にも拘わらず左右差が生じなかったことより,制限を有する側に健常な機能が自動調整され,常にバランスのとれた歩行へと補正が働くことが確認できた.しかし,以上の結果はあくまでも健常人による疑似脳卒中患者の歩行であるため,維持期における脳卒中患者に直接同様の訓練方法を施行し,その効果についてのさらなる検証が必要である.
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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