九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 55
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入院から在宅まで継続担当した症例から学んだ事
起居動作に注目して
*内間 紗貴子親泊 真奈美久貝 明人石川 丈平 敏裕
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抄録
【はじめに】
今回、同一の症例について、回復期リハ病棟から訪問リハまで継続して担当する機会を得た。在宅復帰後に介助量が軽減した起居動作に焦点をおき、入院中のアプローチ内容を振り返り考察を加え報告する。尚、今回の発表に際し、症例及び家族に説明し承諾を得た。
【症例紹介及び生活背景】
60代女性。H20.7に右被殻出血(左片麻痺)。翌月に当院へ転院しH21.2に自宅退院。運動麻痺(BRS_II_-_II_-_II_)、感覚障害(麻痺側重度鈍麻)は、入院時から著変なし。失語、注意・記憶障害を認め、また、依存心が強い事もありADLは中等度以上の介助が必要(FIM入院時27点→退院時46点)。夫と息子2人の4人暮らしだが、主介護者は70代の夫(腰痛持ち)。
【経過】
回復期リハでは、「夫1人の介助でも起居、移乗、トイレ動作が安全にできる」事を目標とし、病棟での反復練習及び端座位や立位での機能的な練習を並行して行った。移乗及びトイレは介助量が軽減し、H21.1頃から夫1人の介助で可能となったが、起居は改善が難しく、夫への具体的な介助指導は退院約3週前からの取り組みとなった。
退院2日後より、40分の週2回で訪問リハ開始(他サービスは通所リハ週3回)。退院10日後より夫の腰痛が悪化。原因は、介助量が増加している事と、症例の依存心による過剰介助と思われた為、症例への起居動作の再指導に重点をおき、並行して夫の介助方法変更も行った。約4ヶ月後、退院時よりも起居動作の介助量が軽減し、約5ヵ月後より夫の腰痛も軽減を認めた。
【考察及びまとめ】
在宅での起居動作は、入院中の指導内容が徹底されておらず、体幹伸展や非麻痺側での過剰努力が強まり介助量が増していた。入院中は、起居動作の根本の問題を「腹部筋活動が不十分」と捉え、座位や立位にて体幹伸展位での活動を通して促通していたが、訪問リハで体幹回旋や非麻痺側上肢の練習を重点的にアプローチした後に、入院中よりも介助量が軽減した事から、起居動作に対する視点の足りなさに気付かされた。また、在宅復帰後は、回復期リハ病棟と比較すると少なからずリハの頻度や質が低下する事による症例自身の機能低下を予測して関わる事が不十分だった事や、依存の強い性格から、過剰介助にならないよう写真での解説を作成する等、夫の腰痛への配慮も不十分であった事を痛感した。今回の経験等を今後に生かし、家族の介護負担軽減も踏まえ広い視野で症例に関われるよう努力したい。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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