九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 7
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「生きる喜びをくれてありがとう」
機能・ADLは改善したものの脳卒中後抑うつが改善しなかった症例との関りを通して
*玉城 希赤嶺 保和
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抄録

【はじめに】
 回復期において脳卒中後抑うつを呈する人は少なくない。そこで、ADLの介入に加え、対象者が意味があると思える作業に着目し、関る事も必要であると考える。
 今回、左視床出血後遺症により役割や習慣が変化した事で、抑うつ状態となっている80代の女性(以下、A氏) を担当した。A氏は、機能・ADLは改善したが、抑うつは改善しなかった。そこで、人間作業モデル(以下、MOHO)を用いて評価し、A氏の価値や興味ある作業を用いて関った結果、抑うつ状態が改善した。以下に考察を加え、報告する。当症例報告は、書面で症例の同意を得ている。
【症例紹介】
 80代女性。今回、左視床出血後遺症にて運動麻痺、感覚障害、運動性失語出現。全身状態安定後、リハビリ目的にて当院へ入院。
【評価】
1.環境:前住居への入居条件はADL・掃除・洗濯自立で家族・管理人は困難と認識。畳・トイレ・ベランダに段差あり。畑まで坂・段差あり。
2.遂行:GDS10/15点軽度抑うつ。FIM72/126点(下衣更衣・排泄・入浴・歩行(歩行器使用)・理解軽介助、認知項目は中等度介助)、掃除・洗濯全介助。
3.習慣:患者役割。リハビリへ消極的。活動性低い。
4.意志:「いつ死んでも良い。やりたい事はやった。諦めではなく満足」。
【内容】
 当初は、機能・ADLに介入し、改善した。しかし、抑うつは改善しなかった。そこで、MOHOの評価にある作業に関する自己評価(以下、OSA-2)を行った。生活について「楽しめない」、畑について「50%やりたいけどできない。とても楽しみな日課」と話し、家族、前住居の友人・畑に価値がある事がわかった。その為、前住居へ退院し、畑も楽しむという目標を立て、機能、洗濯・掃除動作練習、畑、家族・管理人へ情報提供等を行った。徐々に主体性が向上し、活動性も向上した。
【結果】
1.環境:前住居へ退院。家族・管理人も可能と認識。
2.遂行:GDS1/15点。FIM115/126点(理解・表出・記憶・階段見守り、入浴・浴室での移乗・問題解決修正自立)。洗濯・掃除自立。
3.習慣:前住居で友人と畑等を行う。
4.意志:「畑できる。生きる喜びをくれてありがとう」
【考察】
 A氏は、左視床出血後遺症により、習慣や環境が変化した事で有効感の低下・抑うつ状態が生じ、また、「やりたい事はやった。満足」と作業する機会を回避し続ける事で、さらに有効感を低下させていると考えた。そこで、現状からの脱却を目的に、OSA-2を用いて課題や目標を協業し価値・興味ある事に関った結果、有効感が向上し抑うつ状態も改善した。このように変化した要因として、ADL・洗濯・掃除が自立した事に加え、大事な場所で大事な人と好きな作業ができた事、家族・管理人の理解等が考えられる。
【まとめ】
 作業導入が困難な対象者は多い。しかし、今回の症例のように価値や興味ある作業に着目する事で変化する対象者もいる。今後も、クライエントにとって価値や興味ある作業に着目し関れるよう努力していきたい。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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