九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 75
会議情報

地域障がい者フィットネス教室の効果と役割
利用者アンケートを通して
*久野 彩和田 明美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
 福岡市立心身障がい福祉センター(以下、当センター)では、介護保険制度でのサービスに適応しづらい青壮年層の身体障害者の健康維持・体力向上を目的とした「地域障がい者フィットネス教室(以下、教室)」を福岡市より委託を受け、実施している。教室は週1回、午前10時~12時に行い、前半は理学療法士によるコミュニケーションを目的とした情報交換、運動指導員による体操を、後半は10分間の休憩を挟んだ後、外来講師によるヨーガとエアロビクスを週交代で行っている。
 今回、21年度末に教室利用者を対象に教室の内容・目的に関するアンケートを行ったので以下に報告する。
【対象及び方法】
 教室の対象者は、18歳~64歳までの身体障害者で、21年度利用者34名の疾患は脳卒中後遺症者56%、その他の疾患が44%であった。その他の疾患は、脳外傷、筋ジストロフィー、脳性麻痺などであった。
 アンケートは21年度末の教室利用者を対象に無記名にて実施し、20名の回答を得た。失語症などで記入が困難な場合は教室に同行している家族が記入した。
 アンケート項目は教室の内容・回数、スタッフの対応、教室の利用目的、教室以外の外出・運動の機会及び意見・要望とした。
【結果】
 教室の内容、スタッフの対応の項目では「よい」、「だいたいよい」が100%を占めた。教室の回数の項目は「よい」、「だいたいよい」が65%、「あまりよくない」、「よくない」が30%であった。「よくない」と回答した理由は、回数を増やしてほしいというものがほとんどであった。
 教室の利用目的の項目は、「健康・体力維持増進のため」という意見が一番多く、次いで「コミュニケーションの場として」、「障害に配慮してもらえるから」という意見が多かった。
 外出機会の項目では、教室以外の定期的な外出機会が「ない」と回答した人は全体の70%を占めた。「ある」と回答した人の外出先は、病院での外来リハ、作業所などだった。
 運動機会の項目では、教室以外に運動の機会が「ある」と回答した人が35%、「ない」と回答した人が65%であった。
 自由記述では、「一般のフィットネス教室などでは他の利用者とのコミュニケーションがとれず、互いに利用しにくさを感じた経験がある」や「参加して体の動きがスムーズになった」との意見があった。
【考察】
 今回のアンケートから教室が健康・体力の維持増進だけではなく、コミュニケーションの場や外出促進としての効果・役割があることがわかった。教室以外に外出・運動をあまり行っていない人が通い続けている理由として、専門スタッフがいるため安心して安全に運動を行える場であることが考えられる。また、一緒に頑張る仲間がいることが大きな励みになっている。今後は、利用者が教室に通うことで外出や家族以外の人とのコミュニケーションをさらに行いたいと自信がつくようさらなる支援を行いたい。

著者関連情報
© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top