九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 86
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骨盤帯に着目した腰部障害の評価
骨盤帯アライメントと片脚立位の重心動揺
*赤川 精彦武田 雅史猪田 健太郎廣瀬 泰之太田 陽介末次 康平三村 倫子山形 卓也野中 崇宏吉富 公昭荒木 秀明
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抄録

【目的】
臨床上、慢性腰痛症例において骨盤帯の左右非対称性が頻繁に観察される。その骨盤帯の左右非対称性を左右対称に調整するために様々な手技が用いられている。しかし、骨盤帯のアライメントを修正しても、骨盤帯の非対称性が生じることを度々経験する。そこで、今回、骨盤帯の非対称性と仙骨アライメント異常の関連性を運動学的に考察し、骨盤帯のアライメント調整前後での左右の片脚立位における重心動揺の変化、立脚側の仙骨と寛骨の相対的位置関係を検討したので報告する。
【対象と方法】
対象者は、下肢に問題のない骨盤帯の非対称性のある対象者を選択する。男性19名、女性5名の計24名。平均年齢24.3±3.05歳。1)骨盤帯の位置の確認(上前腸骨棘/上後腸骨棘/仙骨のアライメント)、2)立脚側の仙骨と寛骨の相対的位置関係、3)仙腸関節のjoint play test、4)重心動揺計(Zebris社製、PDM)を用いて静的立位重心、片脚立位の重心動揺の測定をした。骨盤帯の非対称性に適応させたmanual therapyを施行後、再度同様に検査を行い、治療前後での比較、検討を行った。
【結果】
1)仙骨と寛骨の相対的位置関係:24例中21例の左仙腸関節が仙骨に対し寛骨の後傾が認められた。2)静的立位重心:全例とも治療前に認められた総軌跡長が治療後、有意(P<0.05)な短縮が認められた。3)右片脚立位の重心動揺の変化:24例中18例において重心動揺の総軌跡長の短縮が認められた。4)左片脚立位の重心動揺の変化:24例中13例において重心動揺の総軌跡長の延長が認められた。5)右立脚側の仙骨と寛骨の相対的位置関係:24例中23例が仙骨に対し寛骨は前傾した。治療前後での変化はなかった。6)左立脚側の仙骨と寛骨の相対的位置関係:24例中19例が仙骨に対し寛骨が前傾した。治療後19例中2例において仙骨に対し寛骨の後傾が認められた。
【考察】
仙腸関節が安定する状態は、仙骨が前傾し、仙骨に対し寛骨が後傾するときである。今回、骨盤帯の位置を修正する前は、右仙腸関節において、仙骨は後傾し、寛骨は前傾し不安定な状態になっていた。仙骨の位置と寛骨の位置を修正後、仙骨に対し寛骨が後傾し、仙腸関節が安定する状態となり右片脚立位時の重心の総軌跡長は減少した。左仙腸関節においては、仙骨は前傾し、寛骨は後傾し安定する状態となっていた。仙骨の位置と寛骨の位置を修正後、仙骨に対し寛骨は前傾し修正前よりも不安定な状態になり左片脚立位時の重心の総軌跡長、重心動揺面積ともに増加した。よって、骨盤帯の非対称性が修正されることのより、右仙腸関節においては、片脚立位時の安定性が向上し、左仙腸関節は仙骨が前傾し、寛骨が後傾し安定させている状態から不安定な状態に変化するため片脚立位時の安定性が低下したと考えられる。骨盤帯の位置を修正することにより、静的立位保持能力が向上するが、片脚立位のようなアライメントだけでなく筋の出力を要するような課題においては安定性が低下すると考えられる。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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