九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 87
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腰部脊柱管狭窄症患者の術式の違いが手術後の多裂筋横断面積とADLに及ぼす影響
*長ヶ原 真奈美榊間 春利長谷場 純仁米 和徳池田 聡
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抄録

【はじめに】
腰部脊柱管狭窄症(Lumbar Canal Stenosis: LCS)における腰椎低侵襲手術である、筋肉温存型腰椎椎弓除圧術(Muscle-preserved interlamina lumbar decompression: MILD)と開窓術(fenestration)を施行されたLCS患者の手術前後の多裂筋横断面積を計測し、多裂筋横断面積がADLに及ぼす影響を検討した。
【対象】
LCSと診断され、L4を病巣に含み、MILDを施行された12名(男性9名、女性3名、平均年齢71.3±8.8歳:MILD群)、開窓術を施行された10名(男性7名、女性3名、平均年齢72.0±5.6歳:開窓術群)を対象とした。なお本研究は当院倫理委員会の承認を得て実施し、対象患者には本研究の目的・方法を十分説明するとともに、データは個人が特定されない形で公表される場合があることを説明した。
【方法】
疼痛・痺れなどのより症状の強い一側を疼痛優位側とし、症状の少ない方を反対側とした。手術前と手術後3週のC T・MRI画像より、L4レベルの多裂筋横断面積をScion image softwareを使用して計測した。ADL scoreは日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準(JOA score)の日常生活動作項目を使用し点数化した。統計学的検定は、手術前後の比較はWilcoxon符号順位和検定、術式ごとの比較はMann-WhitneyのU検定、相関についてはSpearmanの順位相関係数を求め、無相関の検定を行った(p<0.05)。
【結果】
L4レベルの多裂筋横断面積は、MILD群では有意差は認めなかった。開窓術群では疼痛優位側で手術前613.51±236.61mm2から手術後695.95±326.95mm2と有意な増加を認めた。また手術前のL4多裂筋総横断面積とADL scoreにおいてMILD群r=0.5、開窓術群r=0.53で有意な相関を認めた。ADL scoreはMILD群で8.3±1.63点から10.5±1.64点、開窓術群で7±3.65点から11.1±1.86点と両群において手術前後で有意な改善がみられた。
【考察】
L4レベルにおける多裂筋横断面積の手術前後の比較から、MILD施行患者では筋への侵襲が少ないことが示唆された。また開窓術施行患者では手術後に増加傾向を示し、深層筋に浮腫が起こっていると考えられた。術後リハに対するクリティカルパスでは、MILD施行患者では術後1日目より離床・歩行開始、開窓術施行患者では術後2日目より離床・歩行開始が一般的であるが、両術式における術後リハの進行は大差がない状況である。今後は各術式における違いを踏まえた上で術後リハの実施、クリティカルパスの導入を行うことでMILD施行患者においてはADL scoreの改善がより早期より可能となると考えられる。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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