九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 152
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肩甲窩上腕関節に対する運動療法アプローチの再考
*安部 元隆小嶋 栄樹松田 あゆみ
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抄録
【はじめに】
第9回関節ファシリテーション研究会で肩甲窩上腕関節(以下GH)は屈曲の最終域で上腕骨は内旋するという新たな知見を得た。その知見をもとに第44回日本理学療法学術大会において第1報として既往疾患のない健常成人のGHに対するアプローチの再考での研究結果で内旋誘導するという方法も効果的であることが示唆された。今回、中枢神経疾患の方の麻痺側GHに対し、内旋誘導・外旋誘導とを比較した場合、どのような差が生じるか検証した。また、初期内旋および外旋角度が屈曲角度にどのように影響するかを検証した。
【目的】
麻痺側GH屈曲の可動域改善に有効な運動療法アプローチを検証するために1.GH屈曲に伴い、内旋を他動的に誘導2.GH屈曲に伴い、外旋を他動的に誘導。上記2種類の治療を行い治療成績を比較検証する。
【方法】
対象は、中枢神経疾患患者30名(男性13名、女性17名)30肢(麻痺側R15肢L15肢)とした。なお、これらの被験者には研究の目的を十分に説明し、同意を得た上で研究を開始した。方法として30名の被験者のGHに対し、_i_)背臥位にて麻痺側GHの屈曲角度、セカンドポジションにて内旋・外旋角度を測定(passive)_ii_)内旋アプローチ(麻痺側)_iii_)外旋アプローチ(麻痺側)_iv_)治療後背臥位にて麻痺側GHの屈曲角度、セカンドポジションにて内旋・外旋角度を測定(passive)。[注:_ii_)_iii_)は同数となるように分けて実施した。尚、同患者の麻痺側のみのアプローチとし、それぞれの影響(内旋・外旋アプローチ)を防ぐため、どちらか一つのアプローチとした。疼痛がある患者は疼痛の訴えや防御性収縮が出現する直前で可動域を測定した。初期屈曲角度はGHの角度を測定するため、背臥位にて肩甲骨外側縁と上腕骨長軸の角度を測定した。内旋および外旋可動域測定はセカンドポジションが望ましいが疼痛や可動域制限がある場合、外転45°(または最大外転角度)にて測定した。上記の結果を統計処理した。尚、測定方法として理学療法検査・測定ガイド(第3版)の肩関節屈曲に従いpassiveにて行った。統計処理は対応のあるT検定を用い、有意水準は5%未満とした。]
【結果】
初期屈曲角度と内旋誘導後の屈曲角度、内旋・外旋角度有意差あり(P<0.05)。初期外旋角度と外旋誘導後の外旋角度有意差あり(P<0.05)。初期屈曲角度と外旋誘導後の屈曲角度有意差なし。初期内旋角度と外旋誘導後の内旋角度有意差なし。
【考察】
本研究において内旋・外旋誘導の比較検証より内旋誘導のみ屈曲、内旋、外旋角度が有意に改善することがわかった。屈曲角度が改善した理由としてGHでは屈曲0~90°までの関節内運動はGHで軸回転と背側滑り、90~180°までは尾側滑りと腹側滑りをするといわれている。内旋誘導の方がこの関節内の通り道に沿った結果、可動域改善に対して効果的だったのではないかと考えられる。また、屈曲可動域改善に関する因子としては結果より外旋角度より内旋角度の改善が有効ではないかと考えられる。
【まとめ】
GHの屈曲において内旋を誘導するという方法が効果的であると示唆された。また屈曲角度改善に必要な因子として内旋角度の改善が有効ではないかということが示唆された。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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