九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 153
会議情報

cuff tear arthropathyに伴う肩関節血症術後の作業療法の経験
*明石 理佐鈴木 綾香中村 佳子片岡 晶志津村 弘
著者情報
キーワード: 肩関節血症, 疼痛, ADL
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

【はじめに】
今回、肩関節血症の術後、ADL動作において肩関節の屈曲を伴う動作は早期に改善したが、伸展を伴う動作(伸展動作)の獲得に難渋した症例を担当した。作業療法を行った結果、疼痛なく伸展動作が獲得できADLが改善したため考察をふまえ報告する。
【主訴】
痛くて右手が使えない。
【現病歴】
73歳男性、利き手:右。4年前に屋根から転落し、右肩関節脱臼の診断にて治療を受けた。その後、再度脚立から転落し、右肩関節内に出血し、挙上不能となった。保存的治療を行っていたが徐々に疼痛が増悪し、関節内血症が繰り返し出現していたため、手術目的にて当院入院となった。
【術前評価】
疼痛:右肩関節安静時(+)運動時(+)、夜間時(++) ROM-t(A/P):右肩関節・屈曲30°/130°伸展5°/10°外転50°/70°内旋15°/15°姿勢:円背、肩甲骨・上腕骨頭は前方突出 ADL:自立。非利き手に依存しており右上肢は痛みのため全く使用できず、動作時に強い疼痛を伴っていた。
【既往歴】
糖尿病・拡張型心筋症
【経過・治療】術前はROMの改善を図った。手術は関節鏡視下にデブリードマン・肩峰下除圧術を施行された。回旋筋群と上腕二頭筋長頭の全てが完全断裂、退縮していた。術後2日目より肩甲帯と脊柱のリラクゼーション・筋力訓練を行った。術後8日目より三角巾内での机上動作を開始した。術後12日目より三角巾固定を除去し、右上肢でのADL動作開始と同時に伸展動作による肩甲帯と脊柱の協調運動を開始した。術後14日目より自動運動が許可され実際に道具を用いて伸展動作を伴うADL訓練を行い、術後22日目に自宅退院となった。
【考察】
手術では関節鏡視下にデブリードマン・肩峰下除圧術を行い、腱板縫合術は行われず、術後に肩甲上腕関節の機能に大きな変化はみられなかった。そのため、ADLの改善を図るにあたり、長期間の疼痛により生じた姿勢を改善し、伸展動作の要素として肩甲帯や脊柱の動きが必要になると考えた。本症例は円背、肩甲骨・上腕骨頭が前方突出した姿勢を呈しており、胸筋群や三角筋等の筋緊張が亢進していたため、リラクゼーションと筋力訓練を図りアライメントの調整を行った。肩甲帯と脊柱の可動域・筋力が改善してきた頃より、肩甲帯と脊柱の協調的な運動を習得する目的で坐位での協調運動訓練を開始した。ADL指導の際には「肩甲骨を真ん中に寄せるように胸を張って」という口頭指示と、実際に道具を用いて動作指導を行った。その結果、疼痛なく背面でシャツを入れる動作やベルトを通す動作等の伸展動作を右上肢で行えるようになった。

著者関連情報
© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top