九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 155
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掌側ロッキングプレートを用いた橈骨遠位端骨折の術後成績の予測
~セラピスト介入時の情報を用いて~
*内野 康一井上 理恵西村 千恵池田 優生佐伯 匡司中島 雪彦中島 英親
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抄録

【はじめに】
橈骨遠位端骨折は臨床上、数多く経験する骨折である。しかし、しばしば重症度に関わらず難渋する症例を経験することがある。難渋すると予測される患者の早期からの介入手段を考慮することができるように、介入時の情報で判断基準となりえるものがないか検討したため報告する。
【対象】
平成19年6月から平成21年10月に当院にて橈骨遠位端骨折に対して掌側ロッキングプレート固定を施行した157例中、リハビリテーション開始時The Disabilities of the Arm, Shoulder and Hand(以下、DASH)、術後6ヶ月時のMayo modified wrist Score(以下、Mayo)が行われた患者28例を対象とした。内訳は男性5例、女性23例、年齢65.4歳、受傷側(右:16、左:12)、AO分類(A1:1、A3:3、B2:6、B3:3、C1:5、C2:8、C3:2)であった。術後6ヶ月に評価した斉藤の分類(優:12、良:12、可:4、不可:0)であった。また、Mayo(優:3、良:6、可:10、不可:9)であった。
【方法】
Mayo と介入時の情報であるDASH、AO分類、年齢、術側、受傷から手術までの期間、術前・後のvolar tilt(以下VT)、radial tilt(以下RT)、ulnar variance(以下UV)の相関を回帰分析を用いて統計処理した。また、Mayoの総得点に影響する各項目の比重について回帰分析にて相関性を調べた。
【結果】MayoとDASH総得点、質問項目別点で相関は認めなかった。また、AO分類、年齢、術側、受傷から手術までの期間、術前・後のVT、RT、UVにおいても相関はなかった。Mayoの総得点に影響する項目は疼痛、満足度、握力、ROMの順となっていた。
【考察】
DASHは患者の主観的評価であるため精神状況を反映していると思われる。また、Mayoは手関節機能と生活での使用程度を把握できる評価である。MayoとDASHで相関を認めなかった理由としてはDASH評価時期が術前・術直後であったため機能障害や症状に大きな違いがなかったことが考えられる。また、多くの文献でAO分類と治療成績には相関があると言われているが今回の調査では相関は認めなかった。このことは、手術での処置がしっかり行えており、術後の状態に偏りがなかったことを示している。今回の調査結果からは介入時の情報での予後予測は困難であるが、予後にはリハビリテーションが最も影響することが予想される。Mayoの総得点に影響する項目は疼痛、満足度、握力、ROMの順であったため、術後管理や患者指導を徹底し、疼痛の除去に努める必要がある。さらに、疼痛対策を含めたパンフレットへの改定、外来での自主練習や患側管理の見直しを行う必要があると考える。

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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