九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 172
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当法人の障害者施設等一般病棟における日常生活自立度改善に関する要因について
*川満 尚彦増崎 力友田 秀紀矢野 浩二宮岡 秀子
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抄録
【目的】
当法人における障害者施設等一般病棟(以下障害者病棟)の入院患者を対象とし、入院時の動作・活動能力から日常生活自立度(以下自立度)改善に関係する因子を分析する。
【方法】
対象は平成20年4月から21年2月迄に当院の障害者病棟を退院した当該病棟対象患者の内、調査及びデータ使用に同意の得られた103名(男性71名、女性32名、64.7±15.1歳)。なお、本研究を行うにあたり当院の倫理委員会の承諾を受けた。診療録より属性項目(年齢、性別、診断名、自立度、入院期間等)、入院時項目(認知症の有無、意識障害の有無、起居動作能力、ADL)のデータを後方視的に抽出した。入院時日常生活自立度のランクが退院時に改善がみられたものを改善群、ランクの変化がなかったものを維持群に分類した。診断名は、特定疾患治療研究事業対象疾患(以下、難病)か否かで分類。入院期間を入院~90日を短期群、91~180日を中期群、181日以上を長期群に分類。認知症有りをMMSE22点以下とし、起居動作能力は自立・見守り・介助・未実施の4段階で評価。ADLはBarthel Indexを用いて評価した。(1)日常生活自立度の改善群、維持群で属性項目を比較した。(2)自立度ランク変化に寄与因子探索のための統計解析として、改善群、維持群の2値を目的変数とし、入院時項目の起居動作能力、Barthel Indexを説明変数とした決定木分析を行った。統計解析にはJMPver8.0.1を用いて有意水準は5%未満とした。
【結果】
診断名は難病45名(43.7%)であった。入院時自立度はランクCが57名(55.3%)と最も多かった。入院目的はリハ加療73名(70.8%)が最も多かった。発症から入院までの期間は225日(69-1654日)、入院期間は93日(40-168日)であり、短期群50名(48.5%)が最も多かった。転帰先は自宅53名(51.4%)、病院43名(41.7%)であった。自立度の改善群は43名(41.8%)、維持群は60名(58.2%)であった。対象患者でランクが低下した者はいなかった。 (1)改善群と維持群の比較では、年齢、性別、診断名、入院目的、転帰先、意識障害の有無において有意差を認めなかった。認知症の有無、発症から入院までの期間、入院期間で有意差を認めた。改善群では認知症有と入院期間の短期群の割合が少なかった。また入院期間の短・中期群で33名(78.6%)であった。疾患と入院期間の比較で有意差を認め、難病では短期群が多く28名(68.2%)であった。転帰先と入院期間の比較でも有意差を認め、自宅退院者の37名(69.8%)が短期群であった。(2)決定木分析の結果、起居動作では第一ノードで寝返りが見守り以上で剪定された。ADLでは食事が一部介助以上、次いで排尿管理の自立以上で剪定された。
【考察】
約4割に自立度の改善がみられた。入院期間は自宅療養の難病疾患に対して短期間のリハを実施している結果、短期群において維持群の割合が多く、自宅退院者も多い結果となったと考える。自立度改善がみられた約8割は、入院に約6ヶ月要しており中長期的な関わりの必要性もあると思われた。自立度改善の寄与因子は、入院時に認知症がなく、寝返りが見守り以上、食事が一部介助以上でかつ排尿管理が自立であれば改善する可能性があった。
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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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