九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第32回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 173
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当院入院患者の離床時間に影響する要因について
*永富 祐太江原 まどか猪野 嘉一
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キーワード: 離床時間, 交流, 決定木分析
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抄録

【はじめに】
離床は,身体機能維持だけでなく,文化的・社会的な側面からも重要な要素となる.そこで,当院の離床時間を調査し,離床時間に影響する要因となっているものを分析したので報告する.
【対象と方法】
対象者は,当院に入院していた離床可能患者69名(男性34名,女性35名,平均年齢76.2±13.0歳)とした.離床時間は,看・介護スタッフおよび療法士がベッドから離れる際と戻る際に記録用紙に記入し,AM7時よりPM7時までの12時間について連続した3日間調査し,1日あたりの平均値とした.各患者の1日の離床時間を目的変数とし,性別,年齢,寝たきり度,認知症度,移動能力,BI,認知症の有無,訓練頻度,パンツの種類,尿意の有無を説明変数として,決定木分析を行った.統計処理にはSPSS(ver.14)を使用し,作成アルゴリズムはCHAIDを用いて,有意水準は5%未満とした.なお,個人情報についてはヘルシンキ宣言に基づいた規定に遵守し,入院時にその使用について説明し同意を得た.また,個人が特定されないように匿名化し,データの取り扱いには十分注意した.
【結果】
全体の平均離床時間は4.5±3.5時間で,以下の5つのノードに分類された.まずBIで分岐し,BI0点では次に訓練頻度で分岐し,週6回が4.4±3.4時間,週3回が1.7±1.9時間であった.BI5点以上では,次に認知症の有無で分岐し,有りの場合7.6±2.9時間,無しの場合はさらに性別で分岐し,男性が2.5±1.0時間,女性が5.5±2.6時間であった.
【考察】
当院では,転倒予防や危険行為防止の観点から,認知症者を病棟詰所の近くで見守るといった体制があるため,認知症者の離床時間が最も長かったと考えられる.また,このことは非認知症者における性差に影響していると考えられ,非認知症女性は,病棟内に認知症者を含んで小さなユニットを形成し他患との交流を行っている.一方で,非認知症男性は,認知症者との交流を拒み,自室で臥床してテレビを見て過ごす時間が多くなったと考えられる.一般的に,閉じこもり発生には他者との交流頻度が関与し,離床は社会的側面からも重要とされているため,当院においても他者との交流という観点から離床の重要性が示唆された.最後に,BI0点の患者には,療法士の介入頻度が影響していたため,生活の質を高めるための工夫が必要であると思われた.
【まとめ】
当院において,離床時間に影響する要因として,BI5点以上の患者には認知症と性別,BI0点の患者には訓練頻度が挙げられた.さらに,離床は患者の社会的側面にも影響を与えるため,他患との交流機会の提供や各患者特有の工夫を行うことで,質の伴った離床を促していくことが今後の課題である.

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© 2010 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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