九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 014
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脳卒中片麻痺患者における長下肢装具から短下肢装具への移行
*岩松 希美小柳 靖裕山内 康太鈴木 聡
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抄録

【はじめに】
 脳卒中治療ガイドラインにおいて、起立―着席訓練などの下肢訓練の量を多くすることは歩行能力の改善のために強く勧められている。また、歩行の改善のために短下肢装具(Ankle Foot Orthosis:AFO)を用いることも勧められている。急性期の片麻痺患者では早期から治療用装具を作成することが必要となるが、経過において長下肢装具(Knee Ankle Foot Orthosis:KAFO)からAFOへと移行する症例も多い。しかしKAFOからAFOへの切り換え(カットダウン)に必要な機能やKAFOの処方の詳細に関する報告は少ない。今回我々はカットダウンに必要な身体機能やADL能力を明らかにするために検討したので報告する。
【対象と方法】
 2010年4月~2011年2月に脳卒中を発症した125名(年齢75.8±11.5歳、男性76名、女性49名、脳梗塞100名、脳出血24名、くも膜下出血1名)のうち、KAFOを使用して歩行練習を実施した症例を対象とし、退院時までにカットダウンした症例をカット群、カットダウンしなかった症例を非カット群に分類した。KAFO使用症例は22名で、使用期間は25.8±14.0日(発症28.7±13.3日)、在院日数は47.3±12.9日で、そのうちカットダウンしたのは15名であった。身体機能の評価として下肢Brunnstrom.Stage、Stroke Impairment Assessment Set(SIAS)、Trunk Control Test(TCT)、National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)を、ADL能力の評価としてFunctional Independence Measure(FIM)を発症7日目、21日目にそれぞれ評価した。統計処理は2標本t検定、Mann-Whitney U検定を用い、有意水準を5%とした。本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に沿った倫理的配慮を行った。
【結果】
 急性期脳卒中片麻痺患者のKAFO使用例において約68%がAFOへと移行した。発症7日目の評価においてカット群と非カット群で有意差はみられなかった。発症21日目においてカット群、非カット群のTCTはそれぞれ61.9±33.4点、15.4±20.5点でカット群が有意に高かった(p<.05)。同様にNIHSSは8.9±3.8点、15.0±5.4点、FIMは運動項目が31.9±21.5点、17.0±8.2点、認知項目が21.5±11.1点、8.9±6.4点で有意差があった(p<.05)。21日目のその他の評価で両群に有意差はみられなかった。
【考察】
 急性期においてカットダウン可能な症例は多く、装具作成時には適切な選択が必要とされる。またカットダウンに必要な身体機能には、筋力や麻痺の程度だけではなく、体幹機能が関与し、ADLの改善にも影響を与えると示唆される。

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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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