抄録
【はじめに】
脳梗塞と診断され発症から4週経過した患者を担当する機会を得た。在宅退院の必要条件に「排泄自立」とあり、トイレ動作訓練の中から見えてきたOTの役割について考察する。
【症例紹介】
70代女性。心原性脳梗塞、左片麻痺。主訴:足が立たない。立ってトイレに行く。BRS:II-II-II。注意障害・USN・動作維持困難。HDS-R:15点。BBS:6点(立位保持17秒)。FIM:発症から4週(入院時);53点(排泄:オムツ1点、・移乗1点)、16週目;68点。20週目;78点、24週目~退院時;86点(排泄:ポータブルトイレ(以下Pトイレ)で自立5点、更衣:臥位で自立)。起居・移乗動作は物的介助で自立、移動:車椅子自走。訓練以外はベッド臥床。大柄な体型で、円背が強く入院時の介助量は大きかった。
【経過】
入院当初は、尿意は曖昧で起居動作・移乗の介助量も多くオムツ着用されていた。排泄に対しての強い希望があり、まずPトイレへ時間誘導から始めた。入院から約16週目が経ち座位バランスや起立能力は向上したが、依然として移乗・立位保持は介助量が大きかった。このままでは排泄動作確立できずに在宅復帰困難であった。そこでこの時期(18 週目)に家屋調査を実施した。訓練内容においては、この時期より残存機能を用いてのADL訓練へ変更し、needであるトイレ自立の獲得を目指した。変更した動作方法で、トイレ動作自立獲得でき,発症から28週目に在宅退院となった。
【考察】
今回、在宅退院の必要条件として「排泄の自立」があった。しかし、本人や家族が希望するまでに能力の改善はなく、家族も在宅復帰に対して受け入れ不良の状況であった。
実際、家屋調査を行ってみると、環境改修も難しい状況だった。そこで、まず在宅での生活を想定し病室のベッド周囲環境を整えた。立位を介しての移乗や更衣動作では自立困難と判断し、更衣はベッド上で、移乗はベッドからPトイレをいざり動作での移乗方法へ変更した。しかし、今まで行っていた方法や人と違うという事で拒否がみられた。徐々に自立が図られるようになると、本人のモチベーションも上がり本人のトイレ動作として定着出来た。また、訓練に家族の参加が得られた事で在宅復帰の受け入れがスムーズとなった。
本人の環境を整えること・本人の能力を生かした動作を取り入れる事でイメージされていた方法や動作とは異なるが、排泄を自立へ導く事が出来た。作業療法士の役割とは、その方がされている「作業」ここでいう「トイレ動作という作業」をいかに安全にかつ楽にかつ効率よく出来るように導くことではないかと考える。いわば「作業の工夫」である。そのためには、本人のしている作業や環境・空間に対して、またご家族に対してもアプローチしていく事が自立へと繋がったと考える。