九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 226
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手指・手関節変形を認める症例の趣味活動の再獲得へ向けたアプローチ
*大黒 陽蔵松尾 理恵中島 音衣麻富田 将西本 加奈長尾 哲男
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抄録
【はじめに】
 関節リウマチ(以下、RAと略す)が既往にあり小脳梗塞を発症した症例を担当した。今回の発症では麻痺はなく廃用のため巧緻動作の低下が見られた。症例はビーズ細工が趣味で著明な手指の変形があっても可能であったが今回の発症後困難となっていた。そこで巧緻動作の改善を目的に上肢装具を作製し作業療法的介入を行う事で、趣味活動の獲得が可能となったため報告する。
【症例紹介】
 60代女性。右利き。診断名は小脳梗塞。合併症はRA・軸椎破裂骨折・環軸椎関節亜脱臼。今回自宅で倒れ当院へ入院後、状態悪化のためA病院に2週間転院し、当院へ再入院する。本人のデマンズは「趣味を出来るようになりたい」である。
【評価】
 Br.Stage(Rt)にて全て6レベル。ROMは両側の肩・肘・手関節に著明な制限あり。筋力は肩・肘3+手関節3‐。感覚は表在軽度鈍麻。変形は両上肢とも手関節・MP関節の掌側亜脱臼、尺側偏位、スワンネック変形、Z変形を認める。側腹つまみは可能であるが指尖つまみは困難。握力は20mmHg。STEF 右53点 左81点。基本動作は歩行以外は自立。ADLは食事(太柄のスプーン使用)・排泄以外要介助(FIM 97点/126点)。MMSE:25点。COPMにて、趣味に対して重要度9・満足度5・遂行度3。抑鬱傾向の発言が聞かれた。
【問題点】
 廃用による右手指の巧緻動作の低下、趣味活動が困難、抑鬱傾向による活動性の低下。
【目標】
 右手指での指尖つまみを獲得し、趣味のビーズ細工が行える。
【経過】
 第1期:機能肢位の獲得に向けた取り組み。評価で手部の機能肢位を他動的に取ると指尖つまみが可能な事が分かった。そこで、右手指の指尖つまみが行えるように、右上肢に対しての装具作製を始めた。まず、MP関節掌側亜脱臼をフォームラバーを用いて予防した。また手関節背屈位を保持するためにフォームラバーにゴムを通し手関節背屈位で固定した。結果、指尖つまみが可能となったため、自主練習を目的として自己装着が行えるように、市販の手関節背屈装具にフォームラバーを取り付けた装具を作製した。第2期:趣味活動獲得に向けた取り組み。装具を装着し、手指の筋力トレーニングを実施した。また、ペグ・大きめのビーズを用いたつまみ動作を繰り返し行った。更に、ビーズ細工作りを簡単な物から徐々に難しい物へと段階付けし、自主練習として自室でもビーズ細工を提供した。
【結果】
 握力は22mmHg。STEF 右72点 。ビーズ細工・紐結びが可能。COPMにて趣味に対して重要度10・満足度10・遂行度10。抑鬱傾向は改善。
【考察】
 今回、症例は趣味のビーズ細工の再獲得に至った。これはRA により不安定な手部に、安定性と機能性を与える事が出来、指尖つまみの獲得が出来たためと考える。また、装具装着で手部の機能肢位にて動作練習を行う事が、効率的な機能改善につながったためと考えられた。
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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