九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 252
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先天性前腕欠損に対する筋電義手の使用状況と今後の課題
*佐伯 匡司鳥飼 彩西村 千恵内野 康一池田 優生今田 吉彦中島 雪彦藤原 勇中島 英親
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抄録
【はじめに】
 当院では義肢装具士と先天性前腕欠損の症例に対して筋電義手の処方に取り組んでいる。今回、簡易上肢機能検査(以下STEF)を用いた評価や使用状況の調査を行なうことができた。若干の考察と今後の課題を報告する。
【対象】
 平成15年より筋電義手を処方した6例中、評価や調査が行えた3例を対象とした。練習開始時の年齢は4歳、5歳、12歳で左先天性前腕欠損であった。筋電義手はOtto bock社のMYOBOCKを用いた。使用期間はそれぞれ8ヶ月、2年、4年であった。
【筋電義手処方の流れ】
 Otto bock社のマイオボーイで筋電の検出と分離ができるかを10回程度の外来リハで判断した。4歳児では介入当初にモニターを見ながらの練習が困難であったため、試用の筋電義手に筋電シグナルを繋いで練習を行った。筋電義手の適応を確認した後に意見書を含めて申請し、障害者自立支援法の特例補装具で支給が認められた。支給後は装着・操作・両手動作練習を行った。
【評価】
 筋電義手では実施困難なものを除くSTEFの7つのtaskを用いた。使用状況は本人や家族に問診を行い具体的な使用場面や筋電義手の装着時間と、筋電義手と装飾義手の装着割合を調査した。
【結果】
 STEFにおいては3例を通してtask1から6の物品移動では良い操作が行えていた。しかし、task7の布の裏返しでは体幹・肩関節での代償が目立った。使用状況においては、使用期間2年以上の2例で特徴的であったのは、原付バイクで筋電義手を使用してハンドル支持していたこと、ズボン着脱やファスナーの開閉、折り紙でつまみ動作ができていること、4歳児では使用に促しが必要であることであった。筋電義手の装着時間は、それぞれ5時間から12時間程度であった。また、3例ともに装飾義手との使い分けをしており、筋電:装飾が5:5から7:3であった。体育時間では3例ともに装飾義手を使っており、4歳児では幼稚園教諭の協力のもと屋内外の活動で使い分けているとのことであった。
【考察】
 切断者と家族が筋電義手を希望するが高価であるため有効に活用できる対象を選択する必要がある。当院では、確実に筋電の検出と分離が可能であること、筋電義手が第1選択であることを確認し、障害者自立支援法の特例補装具で申請を行っている。今回、筋電義手作製後の評価を行ない、全例において補助手程度の操作が可能となっていた。日常生活では、2年以上使用している2例に関しては日常活動でなくてはならないものとなっていた。Friedmanらは幼児など早期から筋電義手を処方することで両手動作が増加、ボディーイメージに義手を受け入れやすいとしている。しかし、4歳児においては早期からの処方であったが使用定着に至っていない。4歳児では使用期間が1年未満であること、具体的な使用場面の設定が不十分であったため、装飾義手と同程度の使用方法で有効に使われていなかったと考える。今後の課題として、遊びや工作で筋電義手の使用の設定を家族・幼稚園教諭と協議できるようセラピストの継続した介入が必要と思われた。
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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