抄録
【はじめに】
当院は全病棟を障害者病棟として運営しているため入院期間の制約がなく、長期的な介入が可能である。今回、筋萎縮性側索硬化症で入院中の患者に対し、年間3回の外出支援を実施したので報告する。
【症例】
60歳代、女性。15年前に関節リウマチを発症。X年、A病院で筋萎縮性側索硬化症と診断され、在宅で近医のフォロー受けていた。しかし夫が前立腺癌の治療を受けるにあたり在宅が困難になったことから、X+1年4月にB病院へ入院となった。その後、療養およびリハ継続目的で6月に当院へ転院となった。温泉、食べること、ウィンドウショッピングが趣味で、発症前はよく外出していた。
【経過】
6月よりリハ開始。重症度分類はStage3、ALSFRS-R35点。上下肢筋緊張低下しているがGMT3(Rt<Lt)、歩行器歩行が見守りで50m程度可能だった。移乗は介助、端坐位は見守りで可能な状態であった。入院当初より身体が動くうちに温泉等へ外出したいとの希望があり、9月、リハスタッフ4名が同行し、同疾患の他患者と共に市内ショッピングセンターに、食事、買い物へ行った。食事は自助具を使用し自立できていた。10月、同じ患者とリハスタッフ4名で再度食事へ行った。この時は疾患が進行しており、自助具を使用しても口まで運ぶことが困難なことが度々みられ介助を要した。12月、市外温泉施設へ入浴、食事のために外出を行った。リハスタッフ3名、看護師1名、主治医が同行した。食事はスプリングバランサーを使用したが、30分ほどで疲労感があり介助を要した。入浴はリフトを使用し、看護師1名、リハスタッフ2名の介助で行った。現在も入院中でありPT、OTが継続して介入している。重症度分類はStage3で変化ないがALSFRS-R22点と低下している。
【考察】
本症例は現在のところ胃瘻造設、気管切開、人工呼吸器の使用を希望していない。現在は四肢筋力低下のみで球麻痺症状はないが、進行することは明らかである。今後は胃瘻、人工呼吸器に対する理解を深めてもらうことも必要と思われる。また院内生活でリハスタッフと過ごす時間を楽しみにしており、1対1で関わることができるからこそ、身体リハに限らず心理的なサポートが重要であると考える。当院では3年前から緩和ケアチームが発足し、生活リハの観点から一時帰宅などの外出支援を行っている。さらに難病患者に対しても医師、看護師、地域医療連携室を含め、チームで積極的に外出支援やグループ活動を行っている。本症例は進行性の疾患であり、残りの人生を満足したものにしてほしいと考え、緩和リハの一環として外出支援を行った。過去3回の外出ではストレス発散になり、疾患が進行しても外出したいという希望が叶ってよかったとの意見が聞かれた。しかし、より質の高いものにするためにも今後は外出支援のマニュアル作成や、多職種との連携方法の確立などを行っていく必要があると考える。