九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 259
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当院独自の移乗用介助ベルト作成について
*野田 将司
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抄録
【はじめに】
 当院は、重症度の高い患者様も数多く受け入れている。その中で、全介助の方、特に体格の大きい患者様が増加し、移乗時に安全性の低下、洋服や病衣の破損、スタッフの腰痛などの問題が発生した。その対策として市販の介助ベルトを使用したが、腰部のみの固定で不安定なため使用を躊躇してしまった。そこで今回これらの問題点を考慮し、当院独自の移乗用介助ベルトの作成を試みたのでここに報告する。
【作成経過】
 1、車椅子業者に相談(安全性・安定性の高い介助ベルトの作成)。
 2、固定性・耐久性の面から素材はナイロンを使用。
 3、腰帯のみでの固定(腰部を巻く)では安定性に欠ける⇒まわし様の構造(股下を通す)が必要。
 4、まわし様の構造では、陰部に疼痛あり。また座位での装着が困難。⇒臀部・大腿部を支える2つのベルトを股下へ通し腰帯に固定。
 5、ベルトを腰帯へ固定する部分はマジックテープを使用。(バックルでは調節が困難)
 6、移乗時のズレを防ぐため、腰帯の内側に滑り止めを使用。
 7、装着しやすいように、腰帯の真ん中に目印をつける。
【使用方法・用途】
 腰帯(ナイロンの帯)を骨盤を覆うようにあて、患者様に合わせ長さを調節し腹部にてバックルで留める。腰帯に付属する2つのベルトを、後方から股下を通し前方へ運び、腰帯の左右で留める(マジックテープ)。移乗の際は、腰帯に付属する握り部分を掴んで行う。
 用途は、主に全介助の方や体格の大きい方の移乗に使用し、慣れれば1人介助でも移乗可能となる。また、平行棒内での歩行介助にも使用可能である。
【実際に使用しての意見】
 ●<良いと考えられる点>
 1、衣類、オムツがやぶれない。
 2、しっかりと支える(つかむことができる)ので安心感があり、力が入れやすい。
 3、身体への負担軽減(患者様・介助者)
 ●<改善が必要な点>
 1、装着に2人必要な場合がある。
 2、装着にある程度練習が必要である
【今後の課題】
 今回、移乗用介助ベルトを作成し実際に活用しているが、さらに改善・改良すべき点もあがっている。それは、当院スタッフだけでなく、ご家族にも利用してもらえるような工夫である。病院内のセラピストが使用するだけでなく、看護師・介護師、さらには在宅でのご家族の方の使用へと繋げていきたいと考えている。そのためには、病院内での使用頻度を上げ、患者様の状態(回復レベルや体格)でどの程度の介助量・介助方法になるのかを調べ、必要なご家族への正確な説明と指導が必要である。今後も積極的に使用し、患者様への負担・介助量の軽減を図っていきたいと考えている。
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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