九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 031
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COPD患者における重症度別における5m最速歩行時間評価の有用性の検討
*柳原 加奈子堀江 淳阿波 邦彦白仁田 秀一今泉 裕次郎市丸 勝昭直塚 博行山田 穂積古賀 義行
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キーワード: COPD, 5m最速歩行時間, 重症度
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抄録

【目的】
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対する全身持久力評価の重要性は十分なエビデンスが得られている。しかし,COPD患者の瞬発的歩行能力評価はあまり行われていない。本研究では,瞬発的歩行能力評価としての5m最速歩行時間をmodified Medical Research Council(mMRC)息切れスケール,Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease(GOLD)病期分類,多次元重症度指数(BODE index)の各グレード別で検討した.
【方法】
 対象は,研究の参加に同意が得られた症状の安定期にあるCOPD患者34名(男性32名,女性2名,平均年齢76.3±7.4歳,BMIは20.4±3.3kg/m2,%FVCは74.14±27.5%,%FEV1.0は 46.3±22.7%,FEV1.0% は51.7±19%)であった.なお,本研究除外対象者は,重篤な内科的合併症の有する者,歩行に支障をきたすような骨関節疾患を有する者,脳血管障害の既往がある者,その他歩行時に介助を有する者,理解力が不良な者,測定への同意が得られなかった者とした.測定項目は5m最速歩行時間、mMRC息切れスケール,GOLD病期分類,BODE indexとした.なお,5m最速歩行時間とは10mの歩行コース上をできるだけ速く歩くよう指示し,中間5mの歩行時間を測定した.
 統計学的解析方法は,5m最速歩行時間を mMRC息切れスケール,GOLD病期分類,BODE indexの各クラス別に一元配置分散分析で分析し,Post hocテストはTukey検定を用いて分析した.なお,帰無仮説の棄却域は有意水準5%とし解析ソフトはSPSS version 17.0(Windows版)を使用した.
【説明と同意】
 本研究はヘルシンキ宣言に沿った研究として実施した.対象への説明と同意は,研究の概要を口頭,及び文書にて説明後,研究内容を理解し,研究参加の同意が得られた場合,書面にて自筆署名にて同意を得た.
【結果】
 5m最速歩行時間の平均値は3.49±1.36秒であった.mMRC息切れスケールのGrade 1は2.62±0.28秒(4名),Grade 2は3±0.9秒(16名),Grade 3は3.81±1.13秒(9名),Grade 4は5.13±2.02秒(5名)であった.GOLD病期分類のStage1は3.17±1.19秒(4名),Stage 2は3.52±0.9秒(8名),Stage 3は3.18±1.16秒(15名),Stage 4は4.28±2.08秒(7名)であった.BODE indexのquartile 1は3.22±1.09秒(6名),quartile 2は2.84±0.64秒(12名),quartile 3は3.57±1.27秒(10名),quartile 4は4.85±1.94秒(6名)であった.5m最速歩行時間の各グレード別では,mMRC息切れスケール(Grade 1 vs 4: p=0.014,Grade 2 vs 4: p=0.006)とBODE index(quartile 2 vs 4: p=0.015)に有意差が認められた.しかし,GOLD病期分類では有意差は認められなかった.
【考察】
 mMRC息切れスケールの軽症群と重症群との間,BODE indexの軽症群と重症群との間に有意差が認められたことで,瞬発的歩行能力は肺機能よりも呼吸困難の増大や,全身持久力などを含む多次元的な能力低下が,瞬発的歩行能力の低下に及ぼすことが示唆された.その原因として,重症COPD患者は呼吸困難に伴い,活動性が低下した状態にあり,廃用的機能低下を呈しているためと考えられる.
【まとめ】
 本研究によって,重症COPD患者は瞬発的歩行能力の低下がみられた.したがって,重症COPD患者の理学療法評価に5m最速歩行時間の評価が必要であると提案できる有意義な研究と考えられる.

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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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