九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 042
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慢性期脳梗塞患者へ反復経頭蓋磁気刺激と上肢リハビリテーションを実施した一症例
*宮本 一樹川原 扶美川原 大和斉藤 弘道児玉 陽子原野 裕司北原 雅代土井 亮志波 直人
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抄録

【はじめに】
 脳卒中による上肢麻痺はプラトーに達するとその後の回復は困難となる場合が多い。脳卒中後片麻痺に対しての反復経頭蓋磁気刺激(以下rTMS)については近年多くの報告がなされているが、今回当院にて慢性期の脳梗塞患者に対して上肢機能の更なる改善を試みるべく、rTMSと上肢機能練習を実施する症例を経験したのでここに報告する。本症例においては大学倫理委員会の承認を得て実施された。
【症例紹介】
 60代男性。93年7月、海綿状血管腫脳内出血にて血管腫摘出術。98年6月再出血にて手術、左半身不全麻痺、左下1/4同名半盲を呈する。職業は造園業を営み自宅は妻と2人暮らし。主訴は左手が緊張すると動かしにくくなることであり、rTMS・リハビリ目的にて入院となる。
【実施方法】
 2週間の入院期間にてrTMSとCI療法に準じた上肢機能練習を実施。刺激強度は運動野刺激域値の90%MTで1Hzの低頻度連続磁気刺激を健側大脳運動野に施行。1日健側100-1000回、週5日実施。評価及び上肢機能練習はCI療法-道免和久編、中山書店-に準じたShaping項目をrTMS後に午前中2時間、自主練習として午後2時間を週5日実施した。
【評価:開始時→退院時】
 ROM:手関節他動背屈30°→60°。片麻痺機能評価(12段階回復グレード)上肢7→8-手指3→3。Modified Ashworth Scale(MAS)肘関節1→1・手関節3→2。簡易上肢機能検査(STEF)右97点→100点・左4点→14点。脳卒中上肢機能検査(MFT)右31点→31点・左18点→20点。Wolf Motor Function test(WMFT)44点→58点。Fugl Mayer Assessment(FMA)上肢項目30点→35点。Motricity Index(MI)上肢92.3→92.3。カナダ作業遂行測定(COPM):遂行度3→5・満足度4→7。
【考察】
 rTMS・上肢機能練習により手関節背屈のROM拡大と片麻痺機能検査MAS、STEF、MFT、WMFT、FMAの各評価にて機能向上がみられた。全指伸展が可能となり、物体のつまみ動作が行えたことで点数の向上につながった。rTMSの効果として脳梁抑制の減少による運動機能改善が報告されているが、今回の評価結果では手指屈筋群の痙性が抑制され手指の伸展が可能となった為と考えられた。この機能改善を持続させる運動訓練としてCI療法に準じた上肢機能練習は確実な効果があったと考えられた。また、COPMにおいては緊張をおさえて上肢を使用することに対する遂行度・満足度が高まり機能的な回復だけでなく精神的充足も図れたのではないかと考えられた。

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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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