九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 048
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簡便な部分浴の検討について
*大重 匡粟田 美湖
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キーワード: 部分浴, 舌下温, 簡便
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抄録

【目的】
 簡便な温浴は、浸す面積を小さくすれば洗面台などでも行え、在宅での治療にも用いることが出来ると考える。今回は前腕浴よりも簡便な部分浴として、手だけを温水に浸す手浴(手浴)と母指だけを温水に浸す母指浴(母指浴)を施行し、身体への影響を比較検討した。
【方法】
 対象者は健康な若年男性12名(内訳:年齢21.1±0.7歳、身長173.9±5.5cm、体重64.2±6.5kg(Mean±SD)) である。部分浴は十分な安静後、室温19℃前後の環境で、41℃の部分浴を20分間実施した。母指浴は母指IP関節までとし、手浴は両手関節までとした。なお両浴はランダムに1日以上の間隔を空けた。湯温はTERUMO社製MODEL CTM205を使用し、41℃に保つよう設定した。 測定項目は舌下温、右前腕皮膚血流量、皮膚温、主観的温感強度、血圧、心拍数とした。測定は安静時と部分浴20分経過時に測定した。舌下温はTERUMO社製MODEL CTM-205を用い、血圧はOMRON社製デジタル自動血圧計HEM-7700、心拍数は日本光電社製BSM-2400を使用した。統計処理は2群間の平均値の差の検定を関連2群でパラメトリック検定とノンパラメトリック検定を用いた。
【結果】
 舌下温は母指浴では安静時より0.51±0.30℃上昇し、手浴では安静時より0.58±0.40℃上昇した。母指浴と手浴の比較では有意差は認めなかったが、安静時の舌下温と比較すると両浴で有意に舌下温は上昇した(p<0.01)。右前腕部の皮膚血流量は、安静時より母指浴で0.9±1.8増加、手浴では6.1±7.8増加を認め、母指浴より手浴が有意に増加した(P<0.05)。主観的温感強度は母指浴で3.1±0.3点、手浴で3.2±0.4点となり、有意差は認めなかった。心拍数は、母指浴では安静時より0.25±5.7bpm減少し、手浴は6.8±8.4bpm増加し有意差を認めた(P<0.05)。血圧は、両浴で収縮期血圧、拡張期血圧ともに一桁程度低下した。
【考察】
 舌下温は、温められた表面積に依存すると考えられており、堀切らは、41℃10分間の全身浴で舌下温が0.7~1.0℃上昇すると報告している。今回の結果では両浴ともに0.5℃以上上昇した。母指浴は全身浴と比較すると温める表面積は非常に小さい面積となるが、手浴と同程度まで上昇したことは、温める面積が小さくても、温浴効果は得られることが分かった。また、母指浴では大きな循環の促進を伴わない体温の上昇がみられ、また主観的な温感も19℃という比較的涼しい環境下で「ちょうどよい」という快適な結果になった。一方、手浴においては循環機能の促進を伴う体温の上昇がみられた。以上のことから、治療効果として循環を促進したい場合は手浴が適しているが、自覚的な温感を得たい場合や循環以外の治療効果を期待する場合は母指浴でも十分効果があるということが考えられた。
【まとめ】
 1.本研究では健康な若年男性12名に対し母指浴と手浴を行い、身体への変化を観察した。
 2.舌下温は母指浴と手浴ともに約0.5℃上昇した。主観的な温感も同等に「ちょうどよい」という結果であったが、皮膚血流量、心拍数については手浴の方が有意に上昇した。

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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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