九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 050
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静的ストレッチングが足関節背屈可動域に及ぼす持続的効果の検討
*大西 弘展後藤 真希子岡本 伸弘増見 伸山田 学中村 浩一
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抄録
【はじめに】
 静的ストレッチング(Static stretching)は,ボブ・アンダーソンにより日本に伝えられ,治療やパフォーマンス向上などのために臨床やスポーツ現場で広く用いられている.そのため,臨床研究から基礎研究まで超音波エコーや画像解析などを使用した様々な観点から研究が行われており,その効果として可動域の改善と筋緊張の低下・血液循環の改善・筋痛の緩和・障害予防・パフォーマンスの改善などが共通して報告されている.これらの効果を報告した先行研究は,ストレッチング直前・直後を比較した「即時効果」がその殆どである.しかし,実際の臨床現場では効率的な運動指導ならびに運動学習が重要であり,そのため「即時効果」だけでなく,「持続効果」も知る必要がある.「持続効果」について先行研究を探索したところ,ストレッチ直後から10分後までの可動域の改善を認めたとういう報告はあるが,それ以降での知見は得られていない.そこで我々は先行研究と同様の方法を用いて,10分後及びそれ以降の可動域改善における「持続効果」について検討した.
【対象】
 下肢に形態的変化の既往が無い健常な男女24名(男:15名,女:9名)右下肢24脚を対象とした.年齢27.7±4.5歳,身長166.5±7.5cm,体重59±12.8kgであった.これら対象者には,研究の趣旨および方法を十分に説明し,同意を得た上で研究を開始した.
【方法】
 評価前に対象者の運動条件を整えるため,エルゴメーター(5min,60w)を課した.角度調節が可能なTilt table(OG技研社製)を用いて,足関節最大背屈角度にて2分間の静的ストレッチングを実施した.ストレッチングの直前,直後,10分後,20分後,30分後,40分後,50分後,60分後に足関節背屈可動域を測定した.測定条件として踵部離床や膝関節屈曲が出現する直前,あるいは足関節周辺に疼痛を生じる直前の角度を「背屈可動域」とした.測定時にもストレッチング効果を与えてしまう影響を踏まえ,各時間の測定については同日中には行わず,先行研究を参考に7日間以上あけて行った.各時間での足関節背屈可動域を分散分析により検定を行い,多重比較検定にはTukey-Kramer法を用いた.なお,統計処理にはSPSS 11.5Jを使用し,危険率5%未満を有意とした.
【結果】
 (1). 直後,10分後,20分後,30分後ではストレッチング直前との有意差を認めた.(p<0.05)
 (2). 40分以降ではストレッチング直前との有意差を認めなかった.(p>0.05)
 (3). 直後と10分後では有意差を認めなかった.(p>0.05)
【考察】
 今回,ストレッチングにおける持続効果の再検討を行った.研究結果から,ストレッチング10分後までは先行研究と同様の効果を認め,さらに10分以降おいても,ストレッチング終了後30分まではその効果を認めた.しかしながら,それ以降は関節周囲における軟部組織の可逆的変化の影響からか持続効果は認められず,これらの結果から運動療法における新たな指針が示唆されたものと考える.
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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