九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 007
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脳卒中片麻痺患者におけるリーチ到達距離の見積もり誤差について
*大山 望, 三野 結加, 伯川 未来, 後藤 仁美, 高月 航, 稲本 裕子, 三谷 興
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抄録
【はじめに】
 脳卒中片麻痺(以下CVA)患者の日常において,リーチ対象と自己との距離認識が不適切な場面は多く,転倒に至る場合も少なくない.しかし,リーチについては健常者を対象とした先行研究が多くCVA患者についての報告は少ない.そこで,CVA患者は健常者よりリーチの見積もり誤差が大きいという仮説を立て,検討を行った.また,結果から得られた見積もりの過大過小傾向について合わせて報告する.
【対象と方法】
 対象は,当院入院中のCVA患者20名(平均年齢63.8±12.0歳,男性12名,女性8名)と健常者20名(平均年齢64.35±9.7歳,男性8名、女性12名)の計40名である.CVA患者は,発症から1~3ヶ月で,視力障害のない動的端座位保持が可能な者であり,病巣,Br.stage,ADL,高次脳機能障害,転倒歴の情報も聴取した.方法は,端座位の被検者に対して目印をつけた車椅子を接近させ,1回目はリーチせず目印に届くと判断した地点で返事をしてもらい位置を測定,2回目に実際に届く位置を測定し,2点間の距離を誤差距離とした.両群の誤差距離は絶対値を用い,Mann-Whitney検定(有意水準は5%未満)にて比較した.また,CVA群・健常群・両群各々についての実測値と予測値の回帰直線から,過大過小傾向を調べた.
【結果】
 1.CVA患者のリーチの見積もり誤差は健常者よりも有意に大きかった(p=0.01<0.05).
 2.両群に予測>実測の傾向が見られたが,CVA群の方が健常群より予測が小さかった.
【考察】
 今回の実験により,CVA患者はリーチの見積もり誤差が生じやすいことが示唆された.到達運動の開始前には,運動イメージに基づいた随意的運動の構えと予測的な姿勢制御が無意識下で実行され,開始後に反射や随意的な筋収縮が生じ,姿勢方略を組み合わせた運動となる.CVA患者では,この一連の過程の障害に加え,身体機能低下や高次脳機能障害により日々更新される運動イメージを繰り返し誤って認識しているため誤差が大きくなると考えられる.また,先行研究ではリーチ対象と自己が接近する条件で見積もりは過大になるとの報告があり,予測が実測を上回る傾向にあった一因に測定条件が考えられる.予測距離については,CVA群の方が小さかったが,支持基底面を超えるリーチであったため運動の困難性とそれに伴った恐怖感が影響したと推測する.本研究により,リハビリテーションでは,運動表出のみでなく認知と運動の一致も重要であることが示唆された.また,見積もり誤差の周知は,転倒防止のための環境設定や動作指導に役立ち,患者自身にとっても「気付き」のきっかけになると考える.さらに,今回高次脳機能障害を有する者ほど誤差が大きい傾向も見られたため,今後は,他条件下での検討とともに,高次脳機能障害との関連も調べ,臨床での応用に役立てていきたい.
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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