九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 076
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脊椎圧迫骨折の離床時期の検討
~ブリッジ運動と疼痛と圧潰程度の関連性~
*塚崎 幸雄中村 千恵子松本 智人大佐古 達也日高 滋紀
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抄録
【はじめに】
 圧迫骨折において,受傷急性期には安静を要するが,患者にとって身体的能力の低下を招くだけでなく,精神的な苦痛を伴うものである.そこで,椎体を支える背筋群に着目し,背筋群が多く関与するブリッジ運動が可能であれば椎体の圧潰を防げると仮説を立て,ブリッジ運動の程度とその時の疼痛,更にレントゲン撮影による椎体圧潰程度の関連性について調べ,ブリッジ運動が可能であれば臥床期間を短縮できるかを検討したので,ここに報告する.
【方法】
 入院から10日間の安静臥床期間のなかで,入院3・7・10日目の午前中に,ベッド上にてブリッジ運動を実施し,運動の可否と疼痛の程度(フェイススケール)を評価した.ブリッジ運動の可否については,腸骨の上後腸骨棘を指標とし,何横指分骨盤挙上が可能かを評価した.
【対象】
 当院にて脊椎圧迫骨折と診断され入院加療した男性1名,女性24名の計25名.平均年齢は77歳±12.4歳.
【結果】
 疼痛の減少に伴いブリッジ運動が可能となる傾向が認められ,最も良好に挙上可能となったのは胸椎部群であった.椎体の圧潰が強く認められたのは胸椎部群であった.疼痛が強い傾向を示したのは胸腰椎移行部群であった.疼痛と椎体の圧潰程度,ブリッジ運動の3者に関連性は認められなかった.また部位別での入院日数に有意差は認められなかった.
【考察】
 本研究は体幹伸筋群に着目し,早期よりブリッジ運動が可能であれば,椎体のThree column theoryのうちPosterior columnの作用により椎体の安定化が図れ,椎体圧迫が軽減され,圧潰防止と同時に疼痛軽減効果もあると考え,早期離床が可能ではないかと考えた.結果,多くの症例で疼痛の減少に伴いブリッジ運動が可能となる傾向が認められた.しかし椎体の圧潰程度が高度であっても疼痛が弱く,ブリッジ運動も容易に可能な症例がいる一方で,圧潰程度は軽度であるにも拘らず疼痛が強く,ブリッジ運動が困難な症例もおり,圧潰程度と疼痛,ブリッジ運動の関連性を見出すことはできなかった.圧潰の程度に着目すると,胸椎部で受傷時より強度の圧潰を認めた.一般的に圧迫骨折の運動療法では体幹伸筋・屈筋群強化が重要視されており,その運動方法としてブリッジ運動が挙げられる.しかし胸椎部は椎体が小さく後弯を呈しているため,ブリッジ運動時に椎体に対する圧がより強く掛かりやすい状態であり,胸椎圧迫骨折患者に対するブリッジ運動は適していないことが示唆される.そのため胸椎圧迫骨折患者に対しては運動内容の検討が必要と考える.疼痛に関して,安静臥床開始から10日で,ブリッジ運動やベッド上動作時において,概ねフェイススケール2程度と軽減している.本研究で入院6週目時点における椎体残存率は,椎体前方部で65.1%,中央部で72.9%であり,一般的に椎体形成術適応となる圧潰率50%を考慮すると,比較的良好な残存率を示している.よって,安静臥床を10日間継続することは,疼痛の沈静化や圧迫部位の安定化に妥当であると考える.
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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