抄録
【はじめに】
当院では糖尿病患者に対する療養指導として糖尿病教室入院を行っており、その中で理学療法士は40分の講義にて運動療法指導にあたっている。糖尿病の療養指導では、個人の身体状況や生活スタイルに合わせた個別な指導が重要とされており、今後個別指導を実施していくにあたり糖尿病患者の運動の傾向や現状を把握するためアンケートを実施し、今後の指導方法について検討したので報告する。
【対象と方法】
平成22年12月から平成23年3月までに当院で糖尿病教室入院した患者100名(男性63名、女性37名)にアンケートを実施。アンケートは1)運動の好き嫌い、2)普段から運動を心がけているか、3)運動の必要性を実感しているか、4)仕事の有無、5)疼痛、6)動悸や息切れの有無、7)麻痺の有無の全7項目であり、その後運動習慣があると答えた75名(男性47名、女性28名)と、運動習慣がないと答えた25名(男性16名、女性9名)に分けて2つの群を比較した。また、習慣がないと答えた群には、運動していない理由について選択回答(複数回答可)にて調査した。なお、アンケートは趣旨を説明し同意を得て実施した。
【結果】
1)運動習慣のある群(以下あり群):好き37%、普通52%、嫌い11%。運動習慣のない群(以下なし群):好き12%、普通48%、嫌い40%。2)あり群:心がけている71%、心がけていない29%。なし群:心がけている20%、心がけていない80%。3)あり群:実感している100%。なし群:実感している80%、実感していない20%。4)あり群:仕事している47%、していない53%。なし群:仕事している60%、していない40%。5)あり群:疼痛有り53%、無し47%。なし群:疼痛有り48%、無し52%。6)あり群なし群ともに有り24%、無し76%。7)あり群:有り3%、無し97%。なし群:有り8%、無し92%であった。また、なし群の運動していない理由として最も多かった回答は、始めても続かない、時間がないであった。
【考察】
運動習慣がある群とない群の結果を比較すると運動の好き嫌い、心がけ、運動の必要性に対する実感、仕事の有無に差がみられた。また、運動していない理由では、続かない、時間がないなどが大半を占めた。一方、疼痛、動悸息切れ、麻痺などの身体面の状況にはあまり差がみられなかった。このことから、自宅での運動習慣の有無は、運動の好き嫌いや意識の高さなどが大きく影響していることが推測される。また、時間的な余裕の有無も影響していると思われる。今後は運動習慣のない方に対し、運動の効果や必要性を分かりやすく説明し、運動が嫌いな方でも取り組みやすいような簡単な運動方法の提案、パンフレットの作成、時間的余裕がない方でも生活に取り入れやすい運動方法の工夫・提案等を行っていきたい。