抄録
【はじめに】
今回、当施設通所リハビリテーションのご利用者が腰椎圧迫骨折後に入院加療を経て、日常生活関連行為(以下、IADL)の再獲得を目的に入所された。在宅復帰に向けて、他職種との連携を図り取り組んできたことを報告する。
【症例紹介】
80歳代女性。次男家族と2世帯住宅に住まれている。受傷前は家事全般をご自身で行なっていた。買い物や病院受診は徒歩または公共交通機関を利用されていた。平成23年1月18日に風呂場の出入り口で段差につまずき転倒し、腰椎圧迫骨折を受傷している。入院加療を経て、平成23年3月7日に当施設にIADLの再獲得を目的とし、早期在宅復帰を目標に定め入所となった。
【作業療法評価】
入所前に家屋状況をチェックし、ご本人様・ご家族様の要望を詳細に情報収集した。基本動作では屋外歩行以外は問題なし。セルフケアでは入浴行為以外は自立。IADLは身の回りの清掃は可能。立位での作業は腰痛のため長時間は困難。洗濯物干しは軽い物であれば可能。身体面では作業時の腰痛と下肢筋力低下があった。立位バランスも不安定で転倒の危険性がある。
【取り組み】
作業療法は、温熱後に徒手アプローチ、マシントレーニングを行なった。立位での調理や買い物を実施した。その他、家庭内でも調理、入浴、洗濯、掃除を4回実施し、退所までに試験外泊を3回行った。そこで、ご本人様・ご家族様から不十分なことを情報収集し、以後のアプローチに反映させた。看護・介護スタッフも屋外歩行や洗濯、ポータブルトイレの洗浄を実施した。
【結果】
上記のアプローチの結果、下肢筋力の向上や歩行時の安定性が増している。立位でのIADLにおいても痛みや疲労感が軽減し、長時間の作業時間が可能になり、時間短縮にもつながった。
【考察】
現在、介護老人保健施設が直面している問題として退所率の低下がある。今回、早期在宅復帰を目標に取り組みを行い、入所前からご本人・ご家族との話し合いを持つことができた。結果、より具体化された目標を見出すことでき、全スタッフ同じ認識のもとアプローチが可能となった。要望や目標が明確になったことで、入所初日から全スタッフ同じ認識でアプローチできたと考えられる。さらに施設内では実施することが困難な課題も、ご本人のご自宅で体験できた。そのことにより、ご本人の「自宅に帰りたい」というモチベーションを保ちつつ、自信もついたのではないかと推測された。
今後退所に向けて、ご本人・ご家族が安心でき在宅生活を長く継続できるような、フォロー体制を全スタッフで確立する必要がある。