九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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第33回九州理学療法士・作業療法士合同学会
セッションID: 095
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入院中3度の人工骨頭脱臼を呈したものの在宅復帰につなげることが出来た一例
*川藤 典子佐藤 哲也金子 創一阿比留 淳也牛津 智美
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抄録
【はじめに】
 当院回復期リハビリテーション病棟において、人工骨頭置換術後に3度の脱臼を経たが、在宅復帰を遂げることが出来た症例を担当する機会を得た。安全、かつ早期に病棟内ADLを拡大するための回復期リハビリテーション病棟の取り組み、在宅での再脱臼に対するリスク管理を含めた動作指導などを行った一症例をここに報告する。
【症例紹介】
 70代後半女性、自宅で転倒により受傷し、右人工骨頭置換術施行なる。合併症に高血圧症、狭心症慢性肝機能 障害、心不全、腎不全を持つ。認知機能の低下はなく、人当たりがよく周囲へ気を配るが、内向的でやや悲観的思考傾向あり。入院前の移動動作能力は室内独歩・室外歩行車歩行レベル。また入院中、合併症などの影響から積極的なリハビリ困難といった状況もしばしば見られた。
【経過】
 自宅で転倒し、受傷 10日後手術施行。翌日より端座位開始、術後5日より平行棒内歩行開始。1 週経過後、回復期病棟へ転棟となる。3週経過時より、熱発や逆流性食道炎の影響からADL拡大が困難となり、車いす移動となる。術後 6週、トイレにて患側へしゃがもうとし、後方脱臼する。その後四点杖歩行可能となるが術後10週の際再脱臼、2日後再々後方脱臼を繰り返す術後14週に歩行車移動見守りレベルにて自宅退院となる。
【まとめ】
 一般的にTHAや人工骨頭置換術後、約8週間は脱臼のリスクが高い時期とされているが、実際の脱臼発生頻度の割合は1 ~5%程度とされる。また再脱臼の発生率は1回目に比べ約 2~3倍になるといわれており、チーム間での早急の対応が求められた。回復期病棟での取り組みとして、統一した動作を指導するために各ADL において一連の動作を写した写真を作成しデモンストレーションによる申し送り・指導を行い、更にベッドサイドに掲示した。また病棟での日常生活そのものを利用して脱臼に対する注意を喚起する事で、患者本人の認識を高めた。特にベッド周囲環境などを在宅と一致させ、在宅へ円滑に移行出来る動作の習得へアプローチを行った。動作指導の中で「行ってはいけない動作」と指導していた部分を、具体的な肢位を表記し、「安全に行える動作」と視点を転回することで、日常生活を拡大する内容へ改善を行った。その際に写真を使用し、安全な動作を視覚的方面からと実際の動作反復によるアプローチを徹底した。今回の反省点を踏まえ、現在脱臼予防動作写真付説明書を作成し、入棟日に配布すると共にベッドサイドへ掲示するよう取り組んでいる。また、病棟の多職種間で動作指導の統一を図ることや、チーム間での密な連携によってリハビリ状況や夜間の情報などを共有することが事故防止に繋がると思われる。回復期リハビリテーション病棟でのチームの特性を生かし、全職種が取り組むADL指導や環境設定、その際のより効率の良い指導法や伝え方については今後も改善を続ける必要性があり、課題といえる。
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© 2011 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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