九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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15年以上経過した重度下肢リンパ浮腫の一例
~チームアプローチの重要性~
*小山 和*多和田 慎子*加藤 貴子
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p. 102

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抄録

【はじめに】

15年以上経過した著しい左下肢リンパ浮腫と象皮症を有する症例を担当した。医療リンパドレナージセラピストである看護師(以下、リンパナース)と理学療法士・病棟看護師がリンパケアに焦点をあてた包括的アプローチを行い、これまで変化のなかったリンパ浮腫に改善がみられ、本人の行動変容にもつながったので報告する。

【症例紹介】

59歳女性。原因不明の腹水貯留により精査目的で当院入院。併存疾患は両側水腎症・両下肢リンパ管閉塞症・右変形性股関節症。既往に27年前子宮がん(子宮全摘術施行)。夫と娘の3人暮らしの主婦。入院前まで屋内外はT字杖使用し歩行は自立、階段昇降は二足一段で自立。買い物は車で連れて行ってもらい、家事全般をこなしていた。また内職でミシンを使用し洋裁業をしていた。

【理学療法評価】

下肢の感覚正常。関節可動域(右/左、度)股屈曲(45/90)膝伸展(-15/0)膝屈曲(135/100)。MMT(右/左)腸腰筋(2/3)大腿四頭筋(4/3)。左下肢リンパ浮腫あり下肢周径(右/左、cm)下腿最大(19.5/35.0)膝蓋骨上縁上15cm(32.0/46.0)。末梢に向かい皮膚は象皮症のため著しく膨れ上がっていた。基本動作自立、歩行器歩行介助レベル、病棟では車いす介助移動。B.I.45点。本人からは「浮腫の治療のためにほかの病院に通院していたが、改善もなく医者からは仕方ないと言われたので、そういうものだとあきらめている」という訴えが聞かれた。

【理学療法経過】

理学療法開始に当たり、すでにリンパナースが介入を開始し、週5日圧迫装具巻き替え・1時間半のリンパドレナージを行っていた。理学療法では装具を外してリンパドレナージと間欠的空気圧迫法・可動域改善訓練を施行し、圧迫装具下で筋力増強・歩行訓練を施行した。作業療法では上肢機能の維持改善・ADL指導を行った。圧迫装具は24時間装着励行とし、理学療法士および病棟看護師で巻き直しの連携を行った。その後のリンパ管シンチ検査で左下肢に異常なリンパ流・Dermal Back-Flowが認められたが、リンパ管開存の可能性が示唆された。介入から40日後、腸間膜脂肪織炎と診断され、外来通院となったためリハビリ終了となった。

【結果】

関節可動域(右/左、度)股屈曲(45/100)膝伸展(0/0)膝屈曲(135/120)、MMT(右/左)腸腰筋(4/4)大腿四頭筋(4/4)に改善した。 左下肢周径(右/左、cm)下腿最大(19.5/34.0)膝蓋骨上縁上15cm(32.0/43.0)、膝蓋骨部~膝蓋骨上縁上15cm間概算体積では226.5cm3(8.7%)の減少が見られた。杖歩行でADL自立となり、退院にあたって圧迫装具はリンパナースの指導によりベルクロで止める簡易版タイプに変更した。本人からは「こんなに良くなるとおもっていなかった。これからは毎日きちんとマッサージします」と無関心期から関心期・行動期へと行動変容が見られた。

【考察】

リンパ浮腫とはリンパ管やリンパ節の先天性の発育不全、または二次性の圧迫、狭窄、閉塞などによって、リンパ流の阻害と減少のために生じた浮腫であり、がん治療後の続発性リンパ浮腫は、全リンパ浮腫患者の約80~90%を占めていると言われている。今回リンパナースと病棟看護師・理学療法士が連携・役割分担し、包括的アプローチが実施できたことで、15年以上経過した重度リンパ浮腫の改善が得られた。

【倫理的配慮,説明と同意】

今回の発表にあたり,院内既定の手順に従い、対象者に十分な説明を行い,文書で同意を得た。 製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費、株式、サービス等は一切受けておらず、利益相反に関する開示事項はない。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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