九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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脊椎圧迫骨折患者における早期の仮コルセット使用の効果について
*市川 裕貴*平山 史朗*山川 誠一郎*島袋 公史*宮窪 優士*鳥巣 喜美子*黒川 奈美子
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p. 138

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抄録

【はじめに】

一般的に、脊椎圧迫骨折患者に対する治療において初期は安静が必要であり、その後、外固定を用いた保存療法が主体であることが多い。当院においても、コルセット完成まで安静臥床の期間があり、リハビリテーション(以下、リハ)もベッドサイドで実施していた。そこで、安静期間を短縮し早期から離床を行い積極的なリハを実施するため、プロトコールの見直しに伴い、訓練用コルセット(以下、仮コルセット)を導入した。今回、仮コルセットを導入した効果について調査したため報告する。

【対象】

対象は、平成24年4月から平成27年3月末日までに、脊椎圧迫骨折で当院に入院した患者183例のうち、不安定な骨折型を認めず、受傷前が自宅生活かつ杖以上で自立歩行可能、認知面の低下が無く調査可能であった63例とし、仮コルセットを使用した患者34例(以下、仮コルセット群:男性5例、女性29例、平均年齢77.2±8.0歳)と仮コルセット未使用の患者29例 (以下、対照群:男性1例、女性28例、平均年齢79.7±13.0歳)の2つに区分した。

【方法】

検討項目は、リハ開始を基準として1)コルセット使用開始までの期間、2)離床開始までの期間、3)歩行開始までの期間、4)歩行自立までの期間(自立歩行獲得者のみを対象)、5)座薬使用率、6)受傷前FIM達成率(受傷前と退院時FIMの割合)、7)自立歩行獲得率、8)在院日数、9)在宅復帰率をカルテより後方視的に調査し比較した。なお、統計学的処理は、Shapiro-Wilk検定、Mann-whineyのU検定、t-検定、Fisherの直接確率計算法を用いて行い、有意水準は5%未満とした。

【結果】

リハ開始から1)コルセット使用開始までの期間は仮コルセット群で1.5±2.5日、対照群で3.9±2.8日、(以下同様に)2)離床までの期間は2.9±3.4日、5.1±3.1日、3)歩行開始までの期間は3.1±3.6日、4.7±2.4日、4)歩行自立までの期間(自立歩行獲得者のみ、仮コルセット群:33例、対照群:26例)は18.0±19.1日、19.0±14.5日、5)座薬使用率は29.4%、34.5%、6)受傷前FIM達成率は97.0%、97.4%、7)自立歩行獲得率は97.1%、89.7%、8)在院日数は47.8±26.5日、44.3±27.2日、9)在宅復帰率は100%、89.7%であり、1)コルセット使用開始までの期間、2)離床までの期間、3)歩行開始までの期間で有意差(p<0.05)が認められ、仮コルセット群で有意に短かった。

【考察】

安静臥床は1日あたり1%から5%の筋力が等比級数的に失われているとの報告がある。本調査において仮コルセット群で約2日間の安静期間の短縮が認められ、離床・歩行開始が早期に行えていた。また、自立歩行獲得率・在宅復帰率は対照群より高値であったことから、仮コルセットを用いた早期の取り組みは、運動機能の維持や廃用予防に寄与したものではないかと考える。また疼痛に対しても、座薬使用率は2群間に差がなかったことから、リハも比較的安全に実施できたのではないかと思われる。今回の調査より、仮コルセットは脊椎圧迫骨折患者に対して有用ではないかと考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

仮コルセットの使用については当院でのプロトコールに盛り込まれており、事前に説明をし同意を得ている。また、患者データ使用することも同様に同意を得ている。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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