九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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Print ISSN : 0915-2032
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健常成人に対するストレッチポールを使用したエクササイズが呼吸機能に及ぼす効果
コアエクササイズ導入の検討
*馬場 慶和*宮本 洋介*石川 美樹
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p. 154

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抄録

【目的】

 慢性呼吸器疾患では胸郭を含む全身の関節柔軟性低下、呼吸補助筋の過緊張、筋力低下を伴う身体機能低下、気道分泌物の貯留などによって呼吸困難感を呈し、運動療法実施の妨げとなる状況が認められる。これらを改善し効率の良い運動を行うことがコンディショニングである。その中でも、日本コアコンディショニング協会が推奨するベーシックセブン(以下、BS)は主観的効果が大きく、即時的なリラクゼーション効果や呼吸困難感の改善が期待されている。BSとは、ストレッチポール(以下、SP)を使用した基本エクササイズであり、安全性、簡便性、再現性が高く、先行研究においても肺活量や胸郭可動性を向上させる可能性が示唆されている。しかし、呼吸機能を含めた身体へ与える影響は明確ではなく、コアへのエクササイズを取り入れることが望ましいとされながらも有効性を検証した報告は少ない。そこで本研究では、BSにコアエクササイズを導入することが呼吸機能に及ぼす効果を検証することを目的とした。

【方法】

 対象者は、健常成人(男性9名、女性7名;合計16名、平均年齢26.8±3.8歳)とした。方法は、BSを実施した後、コアエクササイズとして、腹式呼吸、逆腹式呼吸、腹直筋強化運動、腹斜筋強化運動を施行した。呼吸機能評価は、胸郭拡張差(腋窩部、剣状突起部、第10肋骨部)、呼吸数、SpO2、努力性肺活量、1秒量、1秒率を測定し、介入前後で比較した。SPは株式会社LPN製ストレッチポールハーフカットを使用、電子式診断用スパイロメータ(SP‐370COPD肺Perプラス、フクダ電子)を使用して努力性肺活量、1秒量、1秒率を測定した。統計学的処理は、wilcoxonの符号付き順位検定を有意水準p<0.05にて使用した。

【結果】

 前後比較をした結果、努力性肺活量は介入前4.0±0.9L、介入後4.1±0.9L(p=0.002)、1秒量は介入前3.4±0.6L、介入後3.5±0.7L(p=0.025)と有意に改善を示した。呼吸数、SpO2、1秒率、胸郭拡張差に関して有意差は認められなかった。

【考察】

 本研究では、SPを使用した先行研究同様に肺活量や胸郭可動性を向上させることが予想されたが、胸郭拡張差において有意差は認められなかった。健常成人を対象とする研究では、胸郭可動性の変化が乏しい事に加え、呼吸様式が一様ではなく、胸式呼吸・腹式呼吸優位の違いがあった事が考えられ、対象及び測定方法を検討する必要性がある。努力性肺活量に関しては、胸郭拡張差に有意差を認めていないことからも腹筋群促通による呼気量増大(最大呼気位)に伴い相対的に増大したことが考えられる。コアエクササイズの導入は、腹筋群の促通にて腹圧を高め、呼気を補助したことにより、1秒量は有意に改善を示したと考えられる。横隔膜の収縮力変化が換気に与える影響は大きいとされており、BSにてリラクゼーション効果や呼吸困難感の改善、換気量増大を図り、且つ、コアエクササイズによる横隔膜の求心性刺激の増加や腹筋群への促通は、咳嗽効率の向上にも繋がるのではないかと予想される。今回の結果は、健常成人を対象とした結果であり、身体機能が低下しやすい呼吸器疾患患者に対する効果は検証できていない。今後は、比較対照、症例数を増やし、身体機能が低下しやすい呼吸器患者に対する有効性について、コアエクササイズ導入を多角的に検討していきたい。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究への参加については、説明書および同意書を作成し、研究目的、方法、結果の取り扱いに関して十分に説明を行った後、同意書への署名を頂いた。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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