九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
Online ISSN : 2423-8899
Print ISSN : 0915-2032
ISSN-L : 0915-2032
会議情報
歩行自立の要因分析
-WBI・下肢荷重率・足底感覚による検証-
*徳田 磨梨代*橘 竜太郎*長和 伸治*栗本 諭*松岡 健
著者情報
キーワード: 下肢荷重率, 足底感覚, WBI
会議録・要旨集 フリー

p. 189

詳細
抄録

【はじめに・目的】

安村によると高齢者の転倒は毎年20%生じ、転倒による骨折は加齢とともに増加すると言われている。転倒および転倒不安と関連する予測因子として、バランス能力の低下が挙げられているとの報告がある。また、バランス能力と歩行能力の相関は多くの報告がある。その歩行能力は歩幅と歩行速度に影響するとされており、当院で検証を行った2型糖尿病患者における足底感覚障害を有する者では歩幅が有意に小さくなり、下肢筋力低下と歩行速度に負の相関を示す結果であった。このことから足底感覚は歩行能力に影響を及ぼす因子であることが示唆される。近年、歩行自立の評価指標としてTUGや10m歩行、片脚立位など多くの報告が散見されるが、一方で加嶋らは独歩自立と下肢荷重率、片脚立位時間の関係について、下肢荷重率が独歩の可否をより正確に判別できると報告している。この先行研究の結果では片脚立位保持が困難な症例においても独歩自立例が認められており、その多くは下肢荷重率が90%以上であったと報告している。そこで今回、この簡便かつ安全に実施できる下肢荷重率とバランス能力低下の阻害因子となる足底感覚が歩行自立と関連があるのか検証を行った。

【対象・方法】

対象は中枢神経疾患を有しない65歳以上の当院入院高齢者16名とした。歩行自立度は院内独歩またはT‐cane自立している者を歩行自立群、介助や歩行器・シルバーカー使用している者を非自立群とした。下肢荷重率測定には平衡機能計ゲートビューを使用した。開眼両脚立位で平衡機能計の上に立ち視線は前方、かつ両足底が離れないようにして体幹垂直位で片脚に体重を移動するよう指示した。そして、5秒間保持可能であった荷重量を測定した。下肢筋力の指標にはアニマ社製μ‐Tasを用いて最大等尺性膝伸展筋力を測定し、体重で補正した値を採用した。足底感覚の評価には、モノフィラメント知覚テスターを用いた。足底にモノフィラメントが軽くたわむ程度の強度で刺激を加え、刺激回数は3回とした。そのうち一度でも感じたものを正常とした。また、足底の刺激部位は踵骨、母趾球、小趾球の3箇所とした。歩行能力は10m歩行テストを実施し、助走路(各3m)を含めた約16mの直線路を歩行し、定常歩行とみなせる10mの所要時間をストップウォッチにて計測し、歩行速度と歩幅を算出した。

統計処理は、SPSSを用い、歩行自立群と非歩行自立群関係には対応のないt検定を用い、WBIと下肢荷重率、歩行能力の関係にはPearsonの関係を用いた。有意水準はいずれも5%未満とした。

【結果】

歩行自立群と非歩行自立群では健側・患側下肢荷重率、歩行速度、歩幅に有意差を認めた。足底感覚、%MV、WBIは両群ともに有意差を認めなった。

両群ともに健側・患側下肢荷重率とWBIに中等度の相関、健側・患側下肢荷重率と歩行速度・歩幅に弱い相関を認めた。両群ともに健側・患側下肢荷重率と足底感覚に相関は認めなかった。

【考察】

足底感覚と下肢荷重率の関連は仮説を否定する結果となった。下肢荷重率とWBIと歩行能力の関連性を示唆する結果となった。

今回の検証では症例数も少なく、結論を出すには十分ではなかった。今後、症例件数を増やし、継続して取り組んでいきたい。

【倫理的配慮、説明と同意】

福岡県済生会大牟田病院の倫理委員会の承諾を受けた上で測定を実施した。ヘルシンキ宣言に基づき、すべての対象者には本研究の趣旨と動作を口頭で説明するとともに実演し、同意を得たのちに検証を行った。

著者関連情報
© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
前の記事 次の記事
feedback
Top