九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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非荷重での腓腹筋の筋活動について
表面筋電図を用いての比較
*廣川 健二*三苫 桂嗣*山口 峰史*嶋居 聖貴
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キーワード: 腓腹筋, 非荷重, 表面筋電図
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p. 221

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抄録

【目的】

下肢運動器疾患では骨折部等へのストレスを回避するために、免荷期間を要することが多い。免荷期間中は抗重力位での運動が不十分な為、筋萎縮を引き起こしてしまう。その中でも足部疾患では、腓腹筋、ヒラメ筋の筋萎縮を経験する。その為、免荷期間中には、非荷重(以下,OKC)での、より有効な筋力増強訓練を選択していく必要がある。そこで今回、腓腹筋に着目し、OKCでの異なる試技による筋活動の比較を行った。

【方法】

対象は健常成人17名(男性14名、女性3名 平均年齢30.1±7.8歳)とした。被験筋は腓腹筋内側頭(以下,MG)、腓腹筋外側頭(以下,LG)とし、表面筋電計はMyo system1200(Noraxon社)を用いた。電極貼付部位の皮膚を十分に前処理した後に、電極中心間2cmで貼付した。測定試技は①端座位膝伸展位での足関節底屈(以下,底屈)②腹臥位足関節背屈位での膝関節屈曲0°~90°(以下,膝(背屈))③腹臥位足関節底屈位での膝関節屈曲0°~90°(以下,膝(底屈))④腹臥位足関節背屈位での股関節伸展(以下,股(背屈))⑤腹臥位足関節底屈位での股関節伸展(以下,股(底屈))とし、いずれも3秒間の無抵抗での最大随意収縮を5回実施した。そして荷重下(以下,CKC)での片脚ヒールレイズのピーク値を基準とし、各試技での波形ピーク値を正規化(以下,%MVC)した。統計学的処理には一元配置分散分析後に多重比較検定(Tukey test)を行った。有意水準は5%未満とした。

【結果】

MG、LGともに膝(背屈)と股(背屈)に比べ、底屈、膝(底屈)、股(底屈)の筋活動が有意に高かった。また、MG、LGともに底屈、膝(底屈)、股(底屈)間の比較においては筋活動に有意差はなかった。%MVCの平均値ではMGが底屈:53.3%、膝(背屈):26.2%、膝(底屈):42.2%、股(背屈):13.4%、股(底屈):47.1%となった。LGにおいては底屈:53.1%、膝(背屈):24.6%、膝(底屈):60.5%、股(背屈):19.3%、股(底屈):59.6%となった。

【考察】

MG、LGともに足関節底屈位での試技間では有意差はないものの、MGでは底屈、LGでは膝(底屈)、股(底屈)での試技で、より有効であることが示唆された。2関節筋である腓腹筋は膝関節屈曲作用もあるが、膝(背屈)での筋活動は有意に低かった為、OKCでの膝関節屈曲には腓腹筋の関与は低く、ハムストリングスが大きく関与していると考える。また、足関節の肢位が底屈位以外では、膝屈曲、股関節伸展運動時に腓腹筋の筋活動は有意に低値であり、腓腹筋筋力増強訓練の有効性は低いといえる。その為、膝関節屈曲や股関節伸展運動時には、足関節の肢位に着目することで、同時に腓腹筋筋力増強の効果を高めることが期待できると推察される。

腓腹筋はヒラメ筋とともに歩行立脚後期に最大収縮を行い、対側下肢の振り出しに重要な働きを行っている。その為、腓腹筋の筋力低下は歩行に著明な影響を及ぼしてしまう。免荷期間から有効な運動を選択し、CKCへの筋力増強訓練へ移行する事で早期の正常歩行獲得を図れると考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

対象者には事前にヘルシンキ宣言に準じ、十分な説明と本人の同意を得た。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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