九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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認知症を伴った大腿骨近位部骨折術後に対する起立-着席運動の効果
~運動意欲と運動回数に着目して~
*吉原 由梨, *高畑 起世子, *篠原 敦, *小田原 創, *新藤 和廣, *三好 安
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p. 264

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抄録

【はじめに、目的】

高齢化社会を迎え、加齢に伴う骨粗鬆症や骨折患者数の増加は大きな問題となっている。その中でも大腿骨近位部骨折は歩行能力に大きな影響を与える。自宅復帰に向けて積極的な治療・リハビリテーション(以下:リハビリ)が必要とされるが、高齢者では認知症や合併症による体力低下などにより十分な運動量確保が困難なことは少なくない。当院では、認知症の程度に関わらず単純で比較的簡単な動作である起立-着席運動を中心としたリハビリを行っており、自発的に運動が出来ない場合も促しや介助により最大限の運動量確保に努めている。

今回われわれは、認知症を伴った大腿骨近位部骨折術後の患者において、起立-着席運動に対する運動意欲と起立回数が歩行能力と自宅復帰に与える影響について検討した。

【方法】

対象は、2008年6月~2015年3月に当院入院した大腿骨近位部骨折患者145例のうち、MMSEが23点以下の76例とした。さらに、起立-着席運動を自発的に出来るかどうかを運動意欲の指標として、意欲あり群(46例)・意欲なし群(30例)の2群に分けた。意欲なし群でリハビリ協力が乏しい場合も促しや介助下で出来る限り起立-着席運動を実施した。

調査項目は年齢、MMSE、意欲尺度、起立回数、歩行能力(骨折前・入院時・退院時)、自宅復帰率とした。意欲尺度はN式老年者用精神状態尺度(最低点0点から1,3,5,7,9,10点の7段階評価)を用い、「関心・意欲・交流」のみを客観的に採点した。歩行能力は杖・歩行器の使用の有無は問わず、屋外自立:1、室内自立:2、監視:3、介助:4、不可能:5で分類した。自宅復帰率は骨折前から施設入所の場合、元の生活場所に戻れば自宅復帰とした。統計解析はSPSS11.5J for Windowsを使用し、有意水準は0.05未満とした。

【結果】

意欲あり群/意欲なし群の順で記載。年齢: 82.9±8.7歳/83.6±8.8歳、 MMSE:18.4 ±5.4点/12.2±7.3点、意欲尺度:8.3±2.1点/3.7±1.8点、起立回数:389.1 ±112.0回/203.3±104.9回、歩行能力は骨折前:2.7±1.0/3.3±1.0、入院時:2.9±0.8/3.4±0.8、退院時:2.6±0.9/3.6±0.9、自宅復帰率は82.6%/73.3%。

MMSE、意欲尺度、起立回数、骨折前・入院時・退院時歩行能力で有意な差がみられた(p<0.01)。

【結論】

意欲なし群で有意に認知機能が低下していた。先行研究では中等度以上の認知症合併例であっても、リハビリへの参加が良好であれば良好な機能予後が期待できるとされており、本研究においても意欲あり群では同様の結果となった。意欲なし群は骨折前から歩行能力が低下しており、リハビリにも促しや介助を要したため同じ時間内でも十分な運動量には至らず骨折前の歩行能力まで戻らなかったと考えられる。しかし、入退院時で比較すると改善がみられ、さらに家屋環境調整や家族指導を行うことで7割以上が自宅復帰となり、自宅復帰率は運動意欲の有無で有意差はなかった。この結果より大腿骨近位部骨折術後の起立-着席運動は、認知症の程度や運動意欲の有無に関わらず歩行能力を改善し、自宅復帰にも寄与することが示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の計画立案に際し,事前に所属施設の倫理審査員会の承認を得た。 また研究を実施に際し,対象者に研究について十分な説明を行い,同意を得た。 製薬企業や医療機器メーカーから研究者へ提供される謝金や研究費、株式、サービス等は一切受けておらず、利益相反に関する開示事項はない。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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