九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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大腿骨近位部骨折患者の骨密度に関する調査
歩行・ADL・在院日数に着目して
*和田 あゆみ
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p. 33

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抄録

【はじめに】

大腿骨頚部/転子部骨折ガイドラインによると骨密度の低下は大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子であるといわれており、早期からの治療は骨粗鬆症性骨折を予防し、QOLの維持向上を目指している。今回大腿骨近位部骨折患者の骨密度は術後2週目の歩行状態とADL、回復期病院退院時の歩行状態とADL及び総在院日数に影響があるかを調査したので報告する。

【対象・方法】

2015年7月から2016年1月の期間に当院で手術を施行し、地域連携パスを使用した大腿骨近位部骨折患者の52名のうち、転院後の情報を把握できた患者35名(男性6名、女性29名)を対象とし、骨密度により当院入院中に実施した骨密度測定(Dual‐energy X-ray Absorption;DXA)にてYoung Adult Mean;YAM値の70%未満を骨密度低値群、70%以上を骨密度高値群に分類した。低値群は22名(男性4名 女性18名 年齢79±10)、高値群は13名(男性2名 女性11名 年齢79±7)。調査内容として受傷前の基礎情報は、年齢、BMI、入院前歩行状態、入院前ADL、認知機能(長谷川式簡易知能スケール)、反対側の骨折歴とした。また受傷後については術後2週での歩行状態とADL、回復期退院時歩行状態とADL、総在院日数を調査した。ADLはBarthel Index(以下BI)を、歩行状態はBIの歩行項目の点数を使用して自立15点・介助10点・車いす5点・不能0点とした。また各群内の入院時・退院時の歩行状態・ADLにおいてもそれぞれ比較を行った。統計学的解析はt検定、χ二乗検定、ウィルコクソンの符号付順位和検定にて、危険率5%未満を有意差有りとした。

【結果】

大腿骨近位部骨折患者のうちYAM値が70%未満であったのは全体の62.8%であった。低値群と高値群の受傷前の基礎情報を比較すると(低値群vs高値群)、年齢、BMI、認知機能に有意差はなかった。歩行状態に関しては術後2週(6.9vs7.5 p=0.82)、退院時(11.3vs10.7 p=0.91)であった。ADLに関しては術後2週(62.6vs66.3 p=0.42)、退院時(79.2vs80.9 p=0.63)であった。在院日数に関しては、(82.6vs78.8 p=0.68)であった。低値群の入院時と退院時の歩行状態で有意差を認めた(14.9vs11.3 p=0.003)。その内訳は入院時退院時ともに自立が64%、自立から介助は18%、介助から車いすが18%であった。反対側の骨折歴は低値群4例、高値群0例であったが統計的な有意差は認めなかった。

【考察】

今回、骨密度の差による歩行状態、ADL、在院日数においては有意差を認められなかったが、低値群の36%は退院時の歩行状態が低下しているということが示唆された。また今回の調査では低値群のうち4例に反対側の骨折歴があった。大数加らは大腿骨頚部/転子部骨折を生じた患者は対側のリスクが明らかに高く、対側の骨折は33%が1年以内、52%が2年以内に発症していると報告していることから残りの18例も対側の骨折が予想される。よって、今後は地域連携パスを通して骨粗鬆症に対する治療と転倒予防を念頭においた運動療法や生活指導を含めた患者教育など包括的な対策に取り組む必要がある。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究に際して患者データを使用する旨を説明し同意を得た。

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