九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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腰部脊柱管狭窄症が股関節可動域へ及ぼす影響の検討
*金田 卓
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p. 6

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抄録

【目的】

腰椎と股関節には密接な運動連鎖がある。特にHip Spine Syndromeの確立以降は、様々な病態での影響が注目されているが、先行研究において腰部脊柱管狭窄症と股関節の関連の報告はない。そこで本研究では腰部脊柱管狭窄症(LCS)患者における股関節可動域への影響を検討した。

【方法】

対象年齢は60~79才に限定した。当院の脊椎外科において内視鏡下椎弓切除術を施行した患者53名をLCS群とし、レントゲン所見により腰椎と股関節に疾患がなく関節リウマチや変形性膝関節症もない49名をcontrol群とした。LCS群の中でも症状に左右差のある神経根型と混合型の患者では患側と健側に分けて検討した。測定は学会制定の方法に準じゴニオメーターを使用して股関節の屈曲・伸展・外旋(0度位での外旋)・内旋(0度位での内旋)を同一検者が計測した。検討項目はcontrol群全体に対してのLCS群全体および患側と健側、男性と女性に分けての比較とした。統計処理には対応のあるt 検定とMann-Whitney U testをいてP<0.05を有意差ありとした。

【結果】

LCS群は男性22例・女性31例で平均年齢72.0歳であり、神経根型が24例、混合型19例であった。control群は男性20例、女性29例で平均年齢68.6歳であり、両群の年齢に差は認められなかった。股関節の可動域は屈曲・伸展・外旋に有意差は認められなかったが、内旋においてはLCS群全体(26.1±6.6)および男女共に患側(男性24.9±3.2、女性26.9±8.1)でcontrol群(22.2±4.8)よりも大きく、統計学的にも有意な差が認められた。

【考察】

本研究ではLCS患者の男女ともに股関節可動域は内旋が大きく、特に患側で有意な傾向が認められた。過去の報告では腰椎椎間板ヘルニアの患者では内旋が有意に小さいとされ、股関節回旋可動域が小さいと腰椎へのメカニカルストレスが増大しヘルニア発生に関与すると推察されている。本研究ではLCS患者で男女ともに内旋が大きいという逆の結果となり、性差特有の生活習慣よりLCSの特徴が影響していると考えられる。今回の対象は手術に至った患者であり罹病期間の長さが影響した可能性がある。LCSに特徴的な間欠性跛行では腰椎前屈に伴い骨盤は後傾する。骨盤後傾は股関節には伸展・外旋の方向へ作用するが、これを代償する動作の繰り返しが内旋可動域の増大に繋がったのかもしれない。病態の解明にはさらなる検討を要するが、LCSの間欠性跛行や疼痛回避による姿勢変化が股関節可動域に影響を及ぼす可能性が示唆された。

【まとめ】

腰部脊柱管狭窄症の間欠性跛行や疼痛回避による姿勢変化が、股関節の内旋可動域に影響を及ぼす可能性が示唆された。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の計画立案に際し、当院の倫理審査員会の承認を得た(承認日平成26年5月1日)。 また研究を実施に際し、対象者に研究について十分な説明を行い、同意を得た。 また謝金や研究費、サービス等は一切受けておらず、利益相反に関する開示事項はない。

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