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【目的】
我々は先行研究で、若年者への長期的な関わりや回復期リハビリテーション(以下、リハ)病棟対象外患者への支援、定期的に入院リハを行う往復型の関わり等の実績分析を用いて障害者施設等一般病棟(以下、障害者病棟)の意義や必要性を示してきた。しかし、障害者病棟の対象疾患や入院経路は様々で、特に自宅からの入院患者は入院目的が多様で関わり方にも個別性が求められることから、役割の再整理が課題となっていた。そこで今回、自宅からの入院患者を対象に、生活期における障害者病棟の役割を再考した。
【方法】
対象は、平成24年4月1日~平成27年3月31日に当院の障害者病棟を退院した271名とした(対象外疾患は除外)。診療録より入院経路、基本情報(年齢、疾患、発症から入院までの期間、入院期間、転帰先等)、入退院時のFunctional Independence Measure(以下、FIM)、支援内容(装具・自助具・福祉用具の検討、家族支援、社会参加支援、退院支援)について調査した。分析は、[1]入院経路が自宅の群(以下、自宅群)73名と自宅以外の群(以下、非自宅群)198名に分類し、基本情報、入退院時でのFIM利得を比較した。[2]自宅群内で入退院時のFIMが改善した群(以下、改善群)44名と改善しなかった群(以下、非改善群)29名に分類し、基本情報、支援内容を比較した。統計解析はJMP ver.9を用い、カイ二乗検定、Wilcoxonの順位和検定で分析し、有意水準は5%とした。
【結果】
[1]結果を自宅群・非自宅群で示す。年齢は55.5±20.2歳・64.0±14.9歳、発症から入院までの期間は1928.0±1792.9日・682.8±1528.8日、入院期間は54.7±37.2日・139.4±152.6日、転帰先が自宅は68名(93.1%)・118名(60.0%)、FIM利得は6.3±7.6点(入院時のFIM合計点76.9±27.0点)・9.6±12.7点(入院時のFIM合計点72.0±30.8点)で疾患以外の項目に有意差を認めた。
[2]結果を改善群・非改善群で示す。年齢は61.7±16.5歳・46.2±22.0歳、疾患は難病が37名(84.1%)、脳脊髄疾患等が7名(15.9%)・難病が11名(37.9%)、脳脊髄疾患等が18名(62.1%)、発症から入院までの期間は1372.4±1385.8日・2772.1±2023.4日、入院期間は61.8±40.0日・44.0±37.0日で転帰先以外の項目に有意差を認めた。改善群は自助具や福祉用具の検討、サービス担当者会議等の退院支援の実施率が有意に高かった。非改善群は起居や移乗の家族支援、社会参加支援の実施率が有意に高かった。
【考察】
自宅からの入院患者は、年齢が若い、発症から入院までの期間が長い者が多く、FIMの改善が認めにくいものの約2ヶ月で9割強が自宅復帰しており、往復型として利用していることが確認された。FIM改善有無の比較では、年齢、疾患、発症から入院までの期間、入院期間で差があり、支援内容にも違いを認めた。改善群は、難病疾患が多く、特に環境調整の検討を行い介護保険サービス事業者との連携等の退院支援を実施していた。一方で非改善群は、年齢が若い、脳脊髄疾患等が多い、発症から入院までの期間が長期経過した者が多い傾向にあったが、社会参加や家族への働きかけにより自宅生活の再開に繋がったと推察された。
結果から生活期における障害者病棟の役割を整理すると、機能・活動水準にとどまらず、自宅復帰後の生活機能の向上、社会参加についても多角的に支援し、退院後に関係する人たちと連携をとり、退院後のくらしが再び円滑に送れるよう支援していくことと考える。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の計画立案に際し、事前に当院の倫理審査委員会の承認を得た(承認日平成28年3月23日)。