九州理学療法士・作業療法士合同学会誌
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少年野球選手と高校野球選手における身体所見の特徴
*外間 伸吾*福地 康玄*福嶺 紀明
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p. 94

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抄録

【目的】

当院では、野球選手に対するメディカルチェック(以下MC)を実施している。今回、少年野球チームと高校硬式野球部に対するMCを行った。目的は、少年野球選手・高校野球選手それぞれの年齢層で特徴的な身体所見を検討することである。

【方法】

少年野球選手17名(平均年齢10.6歳)、高校野球選手15名(平均年齢17.1歳)に対して、痛みや練習頻度等に関するアンケート調査およびMCを実施した。

MC項目は、投球側の肩関節可動域(投球側2nd内旋・2nd外旋)、下肢柔軟性テスト(SLR、HBD、HIR)、原テスト(SSDを除く10項目)を行った。原テストは異常なしを1点、異常ありを0点とした。

痛みのある選手の割合、肩関節可動域、下肢柔軟性テスト、原テストの合計点数およびそれぞれの項目における異常率ついて、小学生と高校生で比較検討した。

統計学的検討は、関節可動域と原テストの点数に関しては対応のないt検定を用い、痛みのある選手の割合、原テストの異常率についてはカイ2乗検定を用いた。いずれも5%未満を有意差ありとした。

【結果】

アンケート調査から、現在、痛みのある選手は小学生7名(41.1%)、高校生13名(86.7%)であり高校生で有意に多かった。練習時間について小学生は週5日、1日2~4時間程度、高校生は週7日、1日3~5時間程度であった。

肩関節可動域(投球側)について、2nd内旋角度は小学生44.5°、高校生41.8°であった。2nd外旋角度は小学生121.5°、高校生111.3°であった。total arcは小学生166.1°、高校生153.0°であった。

肩関節2nd内旋角度は両群間に有意差はなかった。2nd外旋角度とtotal arcは、小学生が有意に大きかった。

下肢柔軟性について、SLRは小学生(投球側77.4°、非投球側79.1°)、高校生(投球側79.3°、非投球側81.0°)であった。HIRは小学生(投球側55.9°、非投球側52.6°)、高校生(投球側40.7°、非投球側42.6°)であった。HBDは小学生(投球側2.4cm、非投球側3.1cm)、高校生(投球側10.1cm、非投球側10.4cm)であった。

SLR角度は、両群間に有意差はなかった。HIR、HBDでは、投球側・非投球側とも小学生が有意に大きかった。

原テストの平均点は、小学生6.7点、高校生7.0点で両群間に有意差はなかった。原テストの10項目それぞれの異常率に有意差はなかった。肩外旋筋力は、両群とも80%以上の選手(小学生100%、高校生80%)に低下が認められた。

【考察】

高校生は、成長に伴う身体変化に加え、練習時間や練習強度の急激な増加、投球数の増加を強いられることで身体的負担や疲労が蓄積されることが考えられる。疲労により生じた肩関節・股関節の柔軟性低下が、投球時の下肢から上肢へと伝わる運動連鎖の破たんを招き、肩肘の障害につながると考えた。また、肩肘の障害予防には、腱板筋力を強化し肩関節の安定化を図ることも必要であるが、小学生・高校生ともに80%以上の選手で外旋筋力が低下していた。アンケートでは、肩の腱板筋群のトレーニング方法、ストレッチ方法について知らない選手が多数みられたため、今後も継続的に実施するMCの際には、肩関節・股関節周囲のストレッチや腱板筋強化の重要性についての周知・教育を可及的早期から行っていく必要があると考える。

【まとめ】

高校野球選手は少年野球選手より肩・股関節の柔軟性低下がみられ、痛みのある選手も多くみられた。両群とも肩外旋筋の筋力低下が多くみられており、MCを行う際には、年齢層に応じた身体的特徴を念頭におき、検査・アドバイスを行う必要がある。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究の計画立案に際し、事前に倫理審査員会の承認を得た。 また研究実施に際し、対象者に研究について十分な説明を行い同意を得た。

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© 2016 九州理学療法士・作業療法士合同学会
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