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【はじめに】
ウィルチェアーラグビーは頸髄損傷や切断、脳性麻痺等で四肢に障がいを持つ者が、競技用車椅子を使用して行う国際的なチームスポーツである。車椅子競技の中で唯一コンタクトプレーが許されるスポーツであり、競技中に外傷を生じることは少なくない。そのため、チームスタッフとして、練習や試合での外傷に対し対処・予防していく必要がある。また病態・障がいの程度に応じて選手のコンディションを整えることが求められる。
【目的】
今回、沖縄県のウィルチェアーラグビーチームにおいて、外傷やコンディショニングに対する理学療法士(以下、PT)・作業療法士(以下、OT)としての活動を報告する。
【対象】
沖縄県のウィルチェアーラグビーチーム登録選手7名で、内訳は頸髄損傷4名、先天性多発性関節拘縮症1名、シャルコーマリートゥース病1名、関節弛緩症1名である。平成27年4月から平成28年3月までの期間での外傷発生状況を調査した。
【結果及び対処】
平成27年度チーム登録しているリハスタッフ数は10名で、内PT9名、OT1名が在籍している。
車椅子競技の特性として、外傷の発生部位は上肢に多いと報告されている。対象期間で起きた外傷としてはコンタクト時における指の挟み込みや転倒による打撲・裂傷・腱板損傷があり、その他に尿路感染症による発熱があった。また、大会期間中は試合数が多く、それに伴う疲労やコンタクトプレーが増えることで、日頃の練習に比べ外傷が多く見られた。
練習や試合中の外傷発生時には評価を行い、アイシングやテーピング、止血などの応急処置を行っている。対応困難な事例に関しては、練習や大会後に病院受診後、選手からの報告を受けその対応をスタッフ間で共有している。また、病態や障がいの程度によりコンディションの整え方が異なっており、特に頸髄損傷選手では、体温調節障害・低血糖・尿路感染症に注意が必要である。体温調節では発汗機能障害によって調節機能がうまく働かないため、遠征時期や室内の温度環境によって、霧吹きやアイシングなどを行い、過度の体温上昇を予防している。また、自律神経系機能障害により低血糖状態に陥りやすい為、試合前後での食事・糖分の摂取を促し対応している。その他、血圧管理が必要な選手に対しては内服薬の確認を行っている。大会期間中の移動・連戦での疲労蓄積により体調を崩す選手もおり、その際は、バイタルチェックを行い休息を取れるように工夫している。さらに外傷予防やコンディショニングとして、選手と密にコミュニケーションをとりストレッチやマッサージなどの身体ケアを行いながら、ウォームアップやクールダウンの内容・時間をマネジメントしている。これらの情報をスタッフ間で共有し、効率的にケアできるよう役割分担している。
【まとめ】
ウィルチェアーラクビーにおけるPT・OTの関わりとしては、外傷に対する処置や予防及び病態を理解した上で選手のコンディショニングを行い、スタッフ間で共有して関わることが重要である。
さらに、競技の特性や戦術理解など活動を通して求められるスキルも高めていくことが必要である。
【倫理的配慮,説明と同意】
本調査・発表において、ヘルシンキ宣言に則り当チームにおける選手・スタッフに十分に説明し同意を得た。