La mer
Online ISSN : 2434-2882
Print ISSN : 0503-1540
培養により調べたヒラミモクSargassum oligocystumMontagneの受精卵から幼体までの初期生活期の形態形成と生長
ノイラクサル チダラー マンタチトラ ヴィポジット小河 久朗ルーワノモント カンチャナパシャ林崎 健一
著者情報
ジャーナル フリー

2017 年 55 巻 1-2 号 p. 25-35

詳細
抄録

タイ沿岸ではホンダワラ類は広く分布している。ヒラミモクSargassum oligocystum Montagne はタイ湾東岸の沿岸生態系において重要な生態学的役割を果たすガラモ場の優占種である。しかし,ヒラミモクの初期生活期段階についての情報はほとんどない。この生態学的な知見の間隙を埋めるために,成熟した野生株の生殖器托上から採取した受精卵を培養し,発育を観察した。受精卵は,まず,1 個の大きな細胞と1 個の小さな細胞の2 つに横に分割した。1 個の小さな細胞は数回の分割後,仮根となった。培養後1 日で,1 個の小さな細胞から生じた細胞は仮根を伸長させ,幼胚の基部となり,1 個の大きな細胞は,細胞分裂し,1 日で生長点になった。生長点は,7 日で第1 茎葉を,30 日で第4 茎葉を生じ,それらは披針形であった。茎葉は,60 日で披針形からへら形,90 日で広いへら形になった。半透明の光取り込み窓を持つ屋外の屋根の下に置いた,海水または尿素を4gt-1の割合で溶かした海水で満たした500L のグラスファイバー製のタンクで3 か月齢の幼体を培養した。この2 培養条件下で幼体を5 週間培養したところ,海水で培養したヒラミモク幼体の週ごとの比成長率は,尿素を混ぜた海水で培養したヒラミモク幼体よりも常に高かった。これは,ヒラミモクが,栄養塩の少ない環境に適応している種であるためと考えられる。

著者関連情報
© 2017 日仏海洋学会
前の記事 次の記事
feedback
Top