La mer
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流体力学的刺激に対する雌Oithona davisae (Copepoda: Cyclopoida) の行動特性およびその個体差
Baobo LIU秋葉 龍郎 José María LANDEIRA田中 祐志
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2018 年 56 巻 1-2 号 p. 21-35

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抄録
浮遊性カイアシ類は,流体力学的信号を感じ,餌生物や捕食者を検知する。感じている変形率があるレベルを 越えると,刺激源から逃避する。従って,逃避行動を促す変形率の定量化は,カイアシ類の生存戦略の理解に役立つであろう。一般に,「動物プランクトン」は個体群を示し,個体差は無視されて研究されてきた。そこで我々は,空間的に変化する変形率を吸引流で作成し,成体の雌Oithona davisae の行動を個体別に観察し,定量化した。多くの場合,雌O. davisae は変形率が0.1-1.9(0.54 ± 0.45)s-1の範囲にある位置で逃避した。また,刺激を受けた時のジャンプは通常時よりも長距離,高速であった。また,すべてのジャンプは低変形率の所へ逃避した。このことは,雌O. davisae が流体力学的信号の強度だけでなく,流れの向きや分布も検知できることを示している。また,行動特性の個体差が大きいことがわかった。同一種,ほぼ同じサイズであっても,カイアシ類は様々な個体特性を持つ集団であることが示された。さらに実験結果から,雌O. davisae が,局所的変形率が0.1 s-1より小さい環境を好むことが示唆された。雌O. davisae は,微小な流体力学的信号を検知して餌を待ち伏せて襲うので,より低い変形率の環境に留まることは,餌生物の検出に有利に働くのだと考えられる。
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© 2018 日仏海洋学会
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