抄録
FALLER(1960)および千手(1988)の回転水槽実験で行われた部分障壁実験との幾何学的相似性に注目して,日本海の深層循環を定性的に議論した。パイ型水槽の頂点付近に置いた水のソースによって,水槽内部にはいわゆるSTOMMEL-ARONS 型の循環が形成される。部分障壁実験における循環は,基本的には,水槽縁から伸びた障壁によって隔てられた二つの海盆内の低気圧性循環と西岸境界流によって構成されている。一方,近年の直接測流によると,日本海南部の大和海盆と対馬海盆深層にも低気圧性循環と西岸境界域における強い流れが観測されている。このような類似性は日本海深層におけるSTOMMEL-ARONS 型循環を示唆しているが,複雑な海底地形や渦活動により強く変質されていることがうかがえる。