抄録
本論文は消費者のライフサイクル思考(LCT: Life Cycle Thinking)支援のための環境情報提供方法の開発を目的とする。中学生を対象とした環境教育プログラム、及び、消費者の製品利用に伴う環境影響評価のためのシナリオ分析ソフトウェアを開発した。また、これらの情報提供方法の効果を、LCT に基づく環境配慮行動設計に必要な能力の向上という観点から評価した。情報提供においては、使い捨てのレジ袋と再利用可能なマイバッグの比較を製品比較の題材として用いた。環境教育プログラムは LCT の体系的な学習を目的とし、総合的な学習の時間を利用してプログラムを実施した。効果分析において、プログラム実施による参加者の LCT 能力の向上が認められた。一方、シナリオ分析ソフトウェアはレジ袋とマイバッグの利用時の意思決定に伴う環境影響評価を目的とし、現状の意思決定に伴う CO2 排出量の評価と、CO2 排出量削減のための対策の提案を行うことができる。開発したソフトウェアをウェブアンケートにより配布し、回答者に対して同様の効果分析を行った。その結果、ソフトウェアによる情報提供を行った回答者群において、環境問題に対する関心及び LCT 能力の向上が認められた。以上の結果より、提案する環境情報提供方法の、消費者の LCT 能力の向上に対する有効性が示された。